このエントリは、佐佐木由美子のnoteから転載、一部編集しています。
こんにちは、佐佐木 由美子です。
若い世代の間では、公的年金に不信感を抱く声が目立ちます。
「保険料を払っていない人が多いから危ない」と言う人もいますが、厚生労働省の国民年金の加入・保険料納付状況によると、国民年金の未納者は約1割。
第2号被保険者である会社員等は、給与から厚生年金保険料が天引きされるため、未納になることは考えにくいと言えます。
全体でみると、年金保険料の未納者は1%未満のため、これによって制度の財源が傾くことは現実的には考えられません。
すると「高齢者にたくさん年金を支払っているから財源が底をつくのでは?」という人もいるかもしれません。
年金の財源は、私たちが支払っている年金保険料に加えて、国庫負担や(年金積立金管理運用独立行政法人による)積立金からの取り崩し等で賄われています。
運用面に関して、一時期悪いニュースが流れたこともあって心配される声もありますが、プラスの運用がなされています。
2023年度は、約45兆円もの収益が出ており、累計では約154兆円の黒字です。運用開始以来でみると、年率4%の運用成績を上げているのです。
ただ、こういうニュースは、あまり取り上げられないのですよね。
2024年の財政検証では?
公的年金制度には、加入者数や平均寿命など社会の人口・経済全体の状況を考慮して、給付と負担のバランスを自動的に調整するしくみがあります。
このバランス確認するために、少なくとも5年ごとに、最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる財政収支の見通しを作成しています。
これが「財政検証」といわれるもので、簡単にいうと、公的年金の健康診断に当たります。
2024年の公的年金の財政検証で、過去30年並みの成長が続いた場合の1人当たりの平均年金額が推計されました。
この推計で、実は今の若い世代が老後に受け取る年金は、今の高齢者より多くなる場合もあるとの結果になったのです。
たとえば、今の30歳女性が65歳でもらう年金月額は平均で約10万7000円と、今の65歳より多い試算がなされています。
意外に感じられた人も、多いのではないでしょうか?
この見通しは、厚生年金に加入して働く人が増えることが前提とされています。
人手不足が顕在化する中で、今後ますます女性も高齢者も働く社会になっていくことが見込まれます。
これまで以上に働きやすく、また短時間で働く人も社会保険に加入できるように、働き方改革や社会保険制度の見直しなども行われています。
かつて女性は、出産・育児を契機に退職することが多かったですが、育児休業制度が整ってきたことで、働き続けるケースが増えており、それはイコール厚生年金保険の加入期間の延びにつながっています。
日本の公的年金制度は、「賦課方式」です。
年金財源の大半は、その時の現役世代が支払う社会保険料のため、物価と現役世代の賃金が上がれば、その結果年金は増えることになります。
ですから、より多くの人が労働参加をして、より長く、高い給与で働くほど、保険料収入も年金も増え、高齢者の生活も豊かになるといえます。
ただ、物価や給与ほどには年金が増えないようにして将来の財政を守る「マクロ経済スライド」というしくみもあります。現行制度では2057年度に終わる予定ですが、この話はまた別のところで取り上げたいと思います。
公的年金に関しては、「破綻するのではないか」「払い損になるのではないか」など、様々な不安の声が聞かれますが、誤解されていることが多いのも事実です。
危ない!とうたった方が、注目度は高まるかもしれません。
しかし、そうした情報に煽られてはいけません。甘い話にも注意したいものです。
年金制度のしくみや社会経済の動向をキャッチアップしていくことで、嗅覚を磨いていきましょう。
このエントリが気に入ったら♡をクリックください!