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DIC川村記念美術館~「西川勝人 静寂の響き」

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

DIC川村記念美術館で開催中「西川勝人 静寂の響き」を鑑賞してきました。

今回は企画展と川村記念美術館の魅力についてお伝えしたいと思います。

美術と建築と自然が楽しめる美術館

千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館。

設立者である川村勝巳(1905-1999)は、大日本インキ化学工業(DICの旧社名)創業家の2代目社長として戦後の昭和時代に経営の舵取りをした人物で、美術への造詣が深く、美術館構想を抱き1970年代初頭から20世紀美術を中心とした多彩なコレクションを充実させ、1990年5月に開館。

チケット売り場から美術館へ続く入口
フランク・ステラ《リュネヴィル》 スクラップの塊のようだが鋳造された49ものパーツから構成されている

17世紀のレンブラントによる肖像画、モネやルノワールら印象派の絵画から、ピカソ、シャガールなどの西洋近代美術、そして20世紀後半のアメリカ美術まで、見応えのある作品が収蔵されています。

そのバリエーションの豊かさとコレクションの質の高さには、圧倒されます。

マーク・ロスコ(1903–1970)の〈シーグラム壁画〉が堪能できるロスコ・ルームは、この美術館の魅力のひとつ。ロスコの作品のみで出来上がった空間は、世界にたった4カ所しかありません。

ロスコが最良と考えた自然光に近い環境の展示室で、目を凝らして作品を鑑賞していると、最初は見えなかった色彩が浮かび上がってくるから不思議です。

美術館の設計を託されたのは、日本を代表するモダニズムの建築家・海老原一郎。

エントランスホールの床や天井照明をはじめ、館内の随所にみられる「重なる二つの円」がデザイン・モチーフとなっています。

ステンドグラスの光が反射されて、エントランスホールに移り行く様子も印象的でした。ホールには、マイヨールの彫刻が配されています。

※館内撮影NGのため、その素晴らしさを画像でお伝えできないことが非常に残念です。

約3万坪の庭園には、随所に野外彫刻が設置されており、池を囲むように植樹されている緑も見事です。ちょうど、もみじが美しく紅葉していました。

庭園内にある遊歩道入口

美術と建築と自然が楽しめる質の高い美術館。

最寄り駅からバスで20~30分と、アクセスは決して良いとはいえませんが、無料のシャトルバスが運行されています。

西川勝人と作品

西川勝人(1949–)は、美術を学ぶため23歳でドイツに渡り、ミュンヘン美術大学さらにデュッセルドルフ美術大学で学んだ後もずっとドイツを拠点に活動しているアーティスト。現在ハンブルグ美術大学名誉教授として後進の指導にもあたっているそうです。

本展では、活動初期にあたる1980年代から最新作まで、彫刻、写真、絵画、インスタレーションなど幅広いメディアの作品が展観されています。

国内美術館では初めてとなる回顧展ということで、私自身も作品を鑑賞するのは初めて。予想をはるかに超えて、見応えのある企画展でした。

まず、窓から緑を見渡せる楕円形の展示室Gallery200で、一気に作家の世界へ誘われます。

壁面には24点で1組となるカラーアクリルガラスを用いた「何色」ともはっきり言えない微妙な色彩の《静物》が展示。

そして、フロアには直にホオズキをかたどったクリスタルガラスの《フィザリス》シリーズが無造作に配され、自然光を受けて煌めいています。

異質なものでありながら、全体が調和し、澄み切った静寂な空間を生み出しているのです。

Gallery202から203に進むと、真っ白な大きな部屋が9つの空間に区切られ、まるでラビリンスに迷いこんだかのように蛇行しながら鑑賞するスタイルがとてもユニーク。

周囲の壁には、流れる雲を白黒で撮影した写真シリーズ《分水嶺》が飾られています。

中央にはユリやキクなどの花弁を床に敷き詰めた《秋》がまるで絨毯のように展示されています。黄色みがかった花弁に、ほのかに甘いユリの香りが漂っていました。とても素敵な作品でした。

この展示室では照明は一切使われておらず、天井からの自然光のみという点も重要な要素。

晴れた日を選んで行ってよかったと思いました。

美術館の独特な建築、展示空間が最大限生かされた、唯一無二の世界観を生み出していました。


DIC川村記念美術館は、大変残念ながら2025年3月下旬に休館されることが発表されています。これだけの至宝を惜しむ声はとても大きく、個人的にも存続を願うばかりです。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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