こんにちは、佐佐木 由美子です。
令和6年(2024年)度の地域別最低賃金が10月1日より順次改定されます。
47都道府県で、50円~84円と過去最高の引上げとなり、改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円)となりました。
ちなみに、最高額は東京都の1,163円、対する最低額は秋田県の951円。その比率は、81.8%(昨年度は80.2%)でした。
最低賃金額は時給で発表されるため、月給制の方にとってはピンとこないかもしれません。
実際、自分自身の時間当たりの賃金を理解している人の方が少ないのではないでしょうか?
しかし、月給制で働く正社員の人も、決して他人事ではありません。
特に、固定残業手当が含まれる方は気を付けておきたいところです。
このエントリでは、最低賃金額の確認方法と月給制における注意点についてお伝えします。
最低賃金制度とは?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
あまり知られていませんが、最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます。
一方、「特定最低賃金」は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないルールになっています。
毎年10月に改定されているのは「地域別最低賃金」で、パートタイマーや嘱託など雇用形態やその名称にかかわらず適用されます。
最低賃金額以上となっているか調べるには?
あなたの給与が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と、適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
1.時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
2.日給の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)
3.月給の場合
月給(注)÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
注意したいのは、月給のすべてが含まれるわけではないことです。最低賃金から対象とならない賃金に留意する必要があります。
【最低賃金の対象とならない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
4.出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額≧最低賃金(時間額)
5.上記1~4の組み合わせの場合
基本給が日給制で各手当(職務手当等)が月給制などの場合は、それぞれ上の2、 3の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)と比較します。
月給制の注意点
それでは、多くの会社で採用している月給制のケースで考えてみましょう。
東京都に事業所のある会社で働くAさんが、基本給20万円、通勤手当2万円、時間外手当1万円の計23万円が支給されていたとしましょう。
この場合、通勤手当と時間外手当は除く基本給を月平均労働時間(170時間とした場合)で除して比較するので、
200,000円÷170=1,176円となり、東京都の最低賃金1,163円をかろうじて上回ることから、特に最低賃金における対応をする必要はありません。
固定残業手当(定額残業代)がある場合
このとき、注意したいのは、固定残業手当(定額残業代)がある場合です。
例えば、基本給19万円、固定残業手当5万円、通勤手当2万円の計26万円のケースで考えてみましょう。
単純に通勤手当を除く月給24万円を月平均労働時間で除して計算してはいけません。
というのは、固定残業手当はあくまでも時間外割増賃金であるためで、月給に固定残業手当が含まれている場合は、月給から固定残業手当を除外した月給を時間給換算し、最低賃金と比較する必要があるからです。
この場合は、19万円÷170(月平均所定労働時間とした場合)として計算すると、時給額は1,118円となり、東京都の最低賃金を下回ってしまいます。
このように、見た目の賃金だけで考えるのではなく、各手当の内容に留意して、最低賃金を確認すことがポイントです。
同時に、時間単価が変わると、固定残業手当の金額も変わってきますので、その点も合わせて留意する必要があるでしょう。
まとめ
地域別最低賃金は、毎年10月に見直されます。
まずは、自分の勤務先がある都道府県の最低賃金額がいくらになっているのかチェックしましょう。
地域別最低賃金額の一覧は、こちらから確認ください(厚生労働省HP)。
月給制の場合は、上記のポイントに留意しながら、時間額を算出して各都道府県の最低賃金額と比較します。
もし最低賃金額を下回っていることがあれば、まずは勤務先にその旨を伝え、給与を見直してもらうよう話合ってみることです。
最低賃金を下回る場合、法律上最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされますので、最低賃金額に満たない不足分を請求することができます。
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