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2歳未満の育児時短勤務者への給付金について

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子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律が2024年6月 12 日に公布され、「共働き・共育て」及び育児期を通じた柔軟な働き方の推進のため、「出生後休業支援給付」及び「育児時短就業給付」が創設されることになりました。「育児時短就業給付」の内容については、こちらのエントリをご覧ください。

こんにちは、佐佐木 由美子です。

少子化対策関連法案が2月16日に閣議決定されました。2023年に掲げた「次元の異なる少子化対策」の実行に向けて、今の通常国会で成立を目指すことになりますが、法案のひとつに2歳未満の子がいる時短勤務者への給付金の支給があります。

このエントリでは、2歳未満の子がいる育児時短勤務者への給付金に関する個人的な意見について述べます。

育児時短勤務へのニーズは?

子育てと仕事の両立は働き手にとって重要なテーマであり、社会全体で支えていく課題の一つであることは言うまでもありません。

近年、この分野における法改正は急ピッチで進められており、その一つとして浮上したのが「育児時短就業給付(仮称)」の創設です(以下、「育児時短就業給付」といいます)。

これは、一定時間以上の短時間勤務をした場合に、手取りが変わることなく育児・家事を分担できるよう、子どもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための給付です(第183回雇用保険部会資料より一部抜粋)。

男女を対象としていますが、育児のため時短勤務ニーズは、女性の方が圧倒的に高いことはこれまでの調査結果でも示されています。

「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(労働者調査)によれば、利用することができれば仕事を続けられたと思う支援・サービスをみると、離職前に正社員であった女性のうち、 45.2%が「1日の勤務時間を短くする制度(短時間勤務制度)」を挙げています。

同調査で、末子が2歳になるまでにおける希望する両立のあり方を男女別にみると、以下のとおり男女で大きくニーズが異なることがわかります。

出所: 日本能率協会総合研究所「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」労働力調査(令和4年度厚生労働省委託事業)

女性は「育児のための短時間勤務制度を利用して働く」が38.8%に対し、男性は「フルタイムで働き、できるだけ残業をしないようにする」が39.1%でもっとも回答割合が高く、次いで「残業をしながらフルタイムで働く」が 28.6%となっています。

男性で「育児のための短時間勤務制度を利用して働く」割合は、わずか2.2%に過ぎません。

ただ、こうした結果も、性別役割分業の考え方やそれを支持する社会システムが根底にあることは否めませんが。

時短勤務者への給付金制度を創設して収入面による不安をカバーしたとしても、それによって男性の利用割合が大きく増えるとは、今のところ考えにくいと言わざるを得ません。

育児時短就業給付は男女を対象にしていますが、男女ニーズの違いから女性のための施策と受け取られても致し方ないところはあります。

この新たな給付に関しては、個人的に懸念点もあります。

それは、この施策が(1)男女の賃金格差を助長することにつながらないか、(2)育児時短勤務者と業務をカバーする従業員との分断を生む引き金にならないか、(3)女性のキャリア形成に不利になるのではないか(マミートラック問題など)、という大きく3つの懸念点です。

時短勤務者の業務をカバーする従業員については、企業が業務応援手当等を支給することを国は推奨しており、2024年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。これは中小企業を対象としたものです。

「こうした助成金を利用すればいいではないか」という意見もあるでしょう。

もちろん、従業員にとっては手当がないより、あった方がいいはずです。

むしろ、一部の業務を代替する従業員に対して何の手当や配慮もなく、時短する本人にのみ給付を行えば、職場での軋轢を生むことになりかねません。

ただ、手当以外にも目配せすべきことは多くあり、それらに加えて新しい育児時短就業給付の申請など、リソースの少ない中小企業にとって、決してハードルの低いものではありません。

時短勤務となれば、賃金が労働時間に応じてカットされるのが一般的ですが、時短勤務の利用者が女性に偏れば、さらに男女賃金格差を助長することになります。それは男女の管理職比率にも影響を与えかねません。

問題だと感じるのは、これまでの固定的かつ長時間労働を標準モデルとする考え方が根強いことです。その「標準モデル的な働き方」ができない人を支援するというものだと、本当の意味で柔軟かつ多様な働き方を広げていくのは難しいのではないでしょうか。

本来は、労働時間の長さではなく、成果で評価することを進めるとともに、時短勤務の人も成果をあげればきちんと評価されるようになることが大事だと考えます。

個人的には、子育てのみに限定するのではなく、希望する誰もが時短勤務を含めた柔軟な働き方を選択できる。そうすれば、キャリアを大事にしながら自身の生活を充実させることが男女ともに可能となり、多様な働き方が広がっていくのではないでしょうか。

多様な働き方に対する企業の舵取りは、今後ますます重要になります。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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