こんにちは、佐佐木 由美子です。
知人と会うと、「最近、何か面白い本はあった?」という話題によくなります。
ちょっと気になっていた本を「すごく面白かった!」と言われたら、読んでみたくなりますよね。
好みは人それぞれですし、気になるテーマも違っていて当たり前ですが、情報をシェアするのはなかなか面白いもの。
そこで、このブログでも私が最近読んだ本について、感想を交えご紹介していこうと思います。
ということで、今回は人生後半のキャリアについて考えている方に、参考になるかもしれない一冊。
著者は、幸福について研究する社会科学者で、ハーバード・ビジネス・スクール教授のアーサー・C・ブルックス氏。
「人生後半の戦略書~ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法」という全米でベストセラーになった本です。
著者のキャリアは?
著者は、子どもの頃から世界一のホルン奏者になることを夢見ていました。
19歳で大学を辞め、室内楽団に入り、プロの演奏家として各地を巡業。21歳までに全米50州と海外15か国をめぐり、アルバムも複数出したそうです。
しかし、20代前半に不調に陥り、25歳にバルセロナの管弦楽団に入団するも腕は落ちていく一方。そこで、フロリダにある音楽学校の教員職に就き、事態が好転することを願っていたものの実現しませんでした。
音楽1本に絞ることはリスクがあると考え、音楽活動で生計を立てつつ、ひそかに勉強を続けて経済学の修士号を取得。
31歳のときに「敗北を認め」音楽家のキャリアに見切りをつけます。
そして、父も祖父も大学の教員であったことから、しぶしぶ家系の先例に倣い、博士課程に入学します。
その後、大学教授として社会科学の研究と教育に携わり、仕事を楽しみ、成功を収めていきます。
そして50代半ばの2019年までワシントンにある一流のシンクタンクで(アメリカン・エンタープライズ研究所の)会長を10年間務めました。
それ以降は、ハーバード・ビジネス・スクールとハーバード・ケネディ・スクールで教授を務め、HBSでの「リーダーシップと幸福」のクラスは、マスコミで絶大な人気と注目を集めています。
本書は、自身の経験と様々な科学的データから、人生前半の成功体験から抜け出し、これまでの方程式を修正した人生後半の生き方を指南する一冊です。
一般に、ここまで輝かしい成功を手にする人は多くないでしょう。
とはいえ、若い頃から現在に至るまで、その人なりの成功体験はあると思います。
若い頃と同じような成功を追い求めて、足し算をしていく人生でいいのか。
そうではなく、人生の方程式を修正して、別の道を進もうというのが本書の大枠。
*目 次*
第1章 キャリアの下降と向き合う
第2章 第2の曲線を知る
―流動性知能から結晶性知能へシフトチェンジ
第3章 成功依存症から抜け出す
―「特別」になるよりも「幸福」になる
第4章 欲や執着を削る
―死ぬまで足し算を続ける生き方をやめる
第5章 死の現実を見つめる
―必ずある終わりを受け入れる
第6章 ポプラの森を耕す
―損得勘定なしの人間関係をはぐくむ
第7章 林住期(ヴァーナプラスタ)に入る
―信仰心を深める時期
第8章 弱さを強さに変える
―自然体がもたらしてくれるもの
第9章 引き潮に糸を垂らす
―人生とキャリアの過渡期に必要なこと
中年期に入ると前頭前皮質の働きが低下し、キャリアの落ち込みに苦悩するようになります。
そこで注目したいのが、人に備わる2つの知能「流動性知能」と「結晶性知能」です。
ちなみに、この2つの知能については、目新しいものではなく、もともと心理学者のレイモンド・キャッテルが提唱した、加齢による知能変化に関する理論。
本書以外にも様々なところで取り上げられているのでご存じの方はいるかと思います。
「流動性知能」とは、新しい情報を獲得し、それらをスピーディーに処理・加工・操作する知能で、暗記力・計算力・直観力などが該当します。
一方、「結晶性知能」とは、経験や学習などから獲得していく知能で言語力に強く依存し、洞察力、理解力、批判や創造の能力といったものが該当します。
「流動性知能」が概ね30代から下降が始まるのに対し、「結晶性知能」人生の中・後期にかけて上昇していく特徴があると言われています。
著者は、キャリアを結晶性知能へとシフトすることが大事であると言い、それには「人間関係を深めること」「精神性を探究すること」「弱さを受け入れること」の3つが重要であると指摘しています。
そして、成功依存症からの脱却、欲や執着を削ることを訴えます。
自身も華々しいキャリアを自らの意思で手放したと語りますが、それをどう受け止めるかは読者次第。やや冗長的と感じられるところもなくはありませんが、仕事多忙な日々を送っている人にとって共感できる部分もあるのではないでしょうか。
人生後半のキャリア、過ごし方について漠然とした不安を抱いている方にとってヒントが得られる一冊と言えるかもしれません。
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