こんにちは、佐佐木 由美子です。
厚生労働省が発表した2022年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は17.13%(前年度比3.16ポイント増)と10年連続で上昇し、過去最高を更新しました。
この調査では、2020年10月1日から2021年9月30日までの1年間に子どもが生まれた人のうち、22年10月1日までに育休を取得した人の割合を示しています。
そのため、「産後パパ育休」の取得は含まれていないわけですが、6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」では男性の育休取得率の目標を「25年までに50%」としており、政府目標との溝の大きさが浮き彫りになったとも言えます。
出所:「令和4年度 雇用均等基本調査」事業所調査 厚生労働省
全体平均としては17.13%となっていますが、この調査結果を事業所規模別、雇用形態別にみると、男性育休の課題も見えてきます。
事業所規模別の男性育休取得率
男性育休取得率を事業所規模別に見てみましょう。
500人以上は25.36%、100~499人未満が21.92%、30~99人が17.43%、5~29人が11.15%と、規模が小さいほど男性の育休取得率が低くなっていることがわかります。
厚生労働省は、従業員1000人超の大企業を対象とした別のアンケート結果も公表していますが、こちらでは男性育休の取得率が46.2%と明らかに高い割合となっています。
2023年4月から、従業員1001人以上の企業に男性の育休取得率の公表が義務化されたことも影響していると言えるでしょう。
今後は公表要件を「300人超」の中小企業にも対象を広げる方向で法改正が検討されています。
しかし、全体として人手や資金に余裕がない中小企業では、育休中の代替要員の確保や同じ職場で働く従業員への業務負担軽減が課題と言えます。
厚生労働省イクメンプロジェクトが実施した「男性育休推進企業実態調査2022」の調査結果では、男性の育児休業の取得に向けた施策を行っている企業のほうが、男性育休取得率が高く、働き方改革を実施している企業は取得率、取得日数ともに高レベルにあるということが示されています。
そもそも、産後パパ育休制度が創設されたことさえ知らない働き手が多いというのも悩ましいものです。
日本経済新聞社の調査では、同制度を知らないと答えた人は子どもがいない20〜30代で6割弱に上っています。一方で育休を取りたいと答えた男性は66.8%もいます。企業内での周知や取り組みはとても大事だということです。
中小企業であっても、積極的な育児支援への施策を行うことで、取得率の向上は十分に期待できると考えています。
有期契約労働者の取得率は伸びていない
全体の育休取得率は、雇用形態によっても違いが生じていること明らかに。
有期契約の男性の場合、育休取得率は8.57%と前年度に比べて5.64ポイント下がっています。
一方、女性も有期契約の人は65.5%と、前年度比で3.1ポイント低下しています。
雇用形態にかかわらず、希望者が取得しやすい環境づくりも課題と言えます。
有期契約労働者の育児休業取得率
出所:「令和4年度 雇用均等基本調査」事業所調査 厚生労働省
男性の育休取得率の高さは企業の試金石
私は、男性の育休取得率の高さは、従業員にとって働きやすさの指標のひとつであり、企業の行く末をみる試金石だと思っています。
もちろん、取得日数がわずか数日では育休とは言えませんが、ある程度まとまった期間の育児休業を男性社員が取得できることは、恒常的な残業が行われているような職場では難しいものです。
性別役割分担意識が強い職場においても取得しにくいので、ある程度多様性を認め合える職場風土が醸成されていて、従業員間のコミュニケーションも活発であると考えられます。
そうなれば自然と離職率も下がりますし、従業員のワークエンゲージメントも高まるでしょう。
結局のところ、人を大事にする企業に、人は集まるのです。
ウェルビーイングの高い職場で働く人の方が、生産性が高くなるという調査結果もあります。長い目で見れば、企業業績にもプラスの影響を与えると言えるでしょう。
ですから、男女の育児支援に企業が取り組むことは、決して福祉的な施策ではないということです。
それは働き方改革の一環であり、企業にとっても従業員にとっても、win-winになれる施策だと考えます。
さらに、そうした企業が増えることで、日本全体にとっても良い流れが生まれることを期待しています。