こんにちは、佐佐木 由美子です。
島根県安来市にある『足立美術館』へ行ってきました。
足立美術館といえば、アメリカの日本庭園専門誌が選ぶ日本庭園ランキングで、20年連続1位に選ばれた実績もあり、庭園の美しさでも知られています。
今回は、足立美術館の見どころや感想について、庭園風景の写真を中心にお伝えします。
足立美術館とは
足立美術館は、実業家・足立全康(1899~1990年)氏によって1970年に開館された美術館です。
横山大観の一大コレクションを中心に、日本画、陶芸、木彫、漆芸など、日本の美を感じられるコレクションが約2000点所蔵。
およそ5万坪の日本庭園を眺められる本館を中心に、2010年には新館がオープン。新館では、現代を代表する日本画家の作品が展示されています。
さらに、2020年には本館の敷地内に「魯山人館」が開館。約500点に及ぶ北大路魯山人のコレクションのうち、常時120点程が展示されています。
枯山水式のメイン庭園
足立美術館の見どころといえば、足立全康氏が全精魂を傾注したと言われる5万坪の日本庭園です。
入口から進んでまず見えてくるのは苔庭。そこで足立氏の銅像が出迎えてくれます。
廊下を挟んで、少し奥まったところに魯山人館の入口があります。
魯山人館を見終え、その先を進むと、全面ガラスのロビーに枯山水庭の景色が広がっています。
水を用いずに山水の趣を表した枯山水庭は美術館の主庭であり、遠望できる山並みも一体となって雄大なスケール。
この枯山水庭を見渡せる絶好の場所に、『喫茶室 翠』があります。
こちらで、庭を鑑賞しながらしばし休憩。
館内の窓から見える庭園は、『生の額絵』として楽しむことができます。
喫茶室を後にして少し廊下を歩くと、遠くに高さ15メートルの人工滝「亀鶴の滝」が見渡せるスポットに出ます。
さらに進むと、『喫茶室 大観』があります。館内で食事ができるのはこの場所だけ。池庭の景色を存分に楽しめる場所にあります。
立派に育った鯉たちが、優雅に泳ぐ姿も間近に見ることができます。
喫茶室を出て少し歩いていくと、今度は「白砂青松庭」が見えてきます。ここは横山大観の名作『白沙青松』のイメージを日本庭園で表現すべく造られた庭。
ここでは主に鳥取の佐治石と四国の青石が使われていますが、この庭は当初の造園だったために、今では採石できない名石が数多く使用されています。黒松と赤松が左右に配され、引き締まった中にも優美な雰囲気が伝わってきます。
本館・新館の展示作品
庭園鑑賞後は、2階に上がり、メインの展示室へ。
現在は夏季特別展として、「日本画壇を彩る東西の巨匠たち」が開催されています(2023年8月30日まで)。川端龍子『創夜』をはじめ、速水御舟『新緑』、鏑木清方、橋本関雪、竹内栖鳳、上村松園ら近代日本画壇の巨匠たちの作品が展示されています。
奥の展示室は、横山大観の作品が一堂に展示。
これまで様々な美術展で横山大観の作品に触れる機会はありましたが、これまでのイメージを払拭して新たな一面を発見した感覚。とりわけ海に因む作品は、秀逸揃いです。
本館の展示を見終わったあとは、地下通路を通って新館へ。
新館は50号~500号サイズと大型な作品が多く、松尾敏男、那波多目功一、宮廻正明、藁谷実、岸野香らをはじめ現代日本画の名品が多数展示されています。
鑑賞を終えて
手入れの行き届いた庭園が美しいことは、言うまでもありません。
そのせいか整い過ぎている気がしました。枯山水庭はガラス越しに見るためか、手の届かない遠い場所にあるような感覚も。
「庭園もまた一幅の絵画である」という足立氏の思想からすれば、そこに人間が立ち入ることは良しとしないのでしょう。
でも、間近で鑑賞できる良さもあります。
風の匂いや水が流れる音、光に映る葉の輝き……私たちが五感から吸収できるものは想像以上に多く、見たままの景色とともに記憶に留められるものです。
枯山水庭の上を歩くことなど勿論できませんが、別の鑑賞方法もあるといいのではないかと思いました。亀鶴の滝も15メートルから落下する爆音や水飛沫が見聞きできたら、とてもダイナミックに映ることでしょう。
横山大観のコレクションは、大変素晴らしいものでした。
アクセス・メモ
東京から飛行機、電車、バスを乗り継いで向かいましたが、足立美術館まではかなりの距離でした。
米子駅から最寄りの安来駅まで電車で移動、そこからシャトルバスでさらに20分程走ると、山間に忽然と大型駐車場が見えてきます。
※無料シャトルバスが安来駅から往復しています。
大型バスによる観光ツアーで訪れている人たちが多く、個人で行くには、かなり気合(?)が必要かもしれません。
美術館がある場所は足立氏が生まれた地であり、故郷への想いから建てられた所以があるそうです。