こんにちは、佐佐木 由美子です。
先日、島根県松江市にある『島根県立美術館』で展覧会を鑑賞してきました。
率直に言って、予想をはるかに上回る素晴らしい美術館でした。
今回は、島根県立美術館の見どころや感想についてシェアします。
建築家・菊竹清訓の設計によるミュージアム
宍道湖畔に建つ島根県立美術館は、1999年に開館した水との調和をテーマにした美術館。
所蔵作品は7400点余り、水を画題とする絵画、日本の版画、国内外の写真、木を素材とした彫刻、島根の美術という5つの領域に重点をおいて収集が行われています。
松江市は宍道湖に映える風光明媚な土地柄に加え、大名茶人として名高い松江藩主・松平治郷(不昧公)により培われた文化的土壌を擁する歴史ある城下町としても知られています。
余談ながら、松江城の天守から宍道湖と美術館の全景を眺めることができました。
美術館の設計は、戦後日本を代表する建築家・菊竹清訓(1928-2011年)によるもの。宍道湖畔の景観を存分に生かした設計が実に見事です。
2021年から1年間に及ぶ大規模な改修工事が実施され、昨年リニューアルオープン。
穏やかな波状のカーブを描く外観が印象的ですが、一歩エントランスロビー空間に足を踏み入れると、右手にはガラス越しに宍道湖と開放的な空間が広がっています。
天井を見上げると、まるで渚のように白く波打つデザインが施されていて、包み込まれるような感覚に。
ロビーから見える湖の景観を楽しみながら、奥の展示室で企画展をじっくりと鑑賞。
一階の企画展示を鑑賞後は、中二階のアートライブラリーを通り抜けて二階の常設展示室に。
二階のロビーで一際目につくのは、ロダンのモニュメントです。
空間の広さに全く引けを取らない程の存在感。この作品から《考える人》など多くの名作が生み出されたそう。
二階には展示室が5つあります。
展示室1には、ロイヤルブルーの壁に水をモチーフとした風景画のコレクションが展示されています。
クロード・モネ、カミーユ・コロー、シスレー、シニャック、クールベ……水にまつわる名画の数々は、大変見応えがあります。
一際心を奪われたのは、デュフィが描いた《ニースの窓辺》。これはマティスがアトリエとして借りていたホテルの一室を描いたものですが、伸びやかなタッチにコバルトブルーと効果的に配された黄と赤の色彩が印象的な作品です。
奥へ進むと、広いスペースの中央に高村光太郎と荻原守衛のブロンズ像が展示され、それを取り囲むように国内・海外の作品が飾られていました。
すべての展示を見終えて、展望テラスへ。ここからも宍道湖の景色を見渡すことができますが、鑑賞している間に雨が降ってきました。
屋外彫刻~宍道湖うさぎ
美術館周辺には、8作品の屋外彫刻があり、うち6作品が宍道湖岸に設置されています。
遠くから眺めて気になっていた作品が12羽のうさぎで跳躍を表現した《宍道湖うさぎ》です。うさぎたちの表情も豊かで、人気を集めているというのも頷けます。
屋外展示のあるエリアは公園になっていて、地元の方たちがランニングをしたり、自転車で通学する学生さんたちの姿もあり、市民の憩いの場にもなっています。
自然と調和した美術館
建築家・菊竹清訓の手がけた宍道湖畔の特性を生かした創造性豊かな設計に加え、島根県立美術館が所蔵するセンスあるコレクション、屋内外の彫刻作品、さらには「日本の夕陽百選」にも選ばれた宍道湖の夕日が眺められる絶好のロケーション。
企画展もさることながら、自然と調和した美術館自体に大変魅力を感じました。
※現在は『テオ・ヤンセン展』を開催中。
とても温かみのある居心地のよい空間。きっと地元の方たちからも愛されているのでしょう。
併設されているカフェでは、景観を楽しみながらくつろぐことができました。
この美術館に行くために、予定を変更して松江に滞在することにしたのですが、大正解でした。
島根県立美術館は、また行きたいと思える美術館です。
アートを巡るエッセイ