こんにちは、佐佐木 由美子です。
昨今、副業・兼業は珍しくありませんが、実際に2か所それぞれ別の会社で働く場合、雇用保険はどうなるのでしょうか?
雇用保険といえば、失業したときの「基本手当」(いわゆる失業手当)や育児休業を取得した際の「育児休業給付金」など、給付金の有無に関わってくるものです。
それだけに、働き手にとっては関心の高いものではないでしょうか。
そこで、ダブルワークに関する雇用保険の考え方について解説します。
雇用保険の加入要件をチェック
まず、雇用保険の加入要件について確認しておきましょう。
次の (1) 及び (2) のいずれにも該当するときは、雇用保険の一般被保険者となります。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上あること
(2)31日以上の雇用見込みがあること
ちなみに、大学生や専門学校生など昼間学生の場合は、学業が本分ですので対象とはなりません。
雇用契約でダブルワークの事例
では、兼業の事例で考えてみましょう。
パートタイマーとしてA社で週20時間の雇用契約で働いている人がいるとします。
A社では、すでに雇用保険だけでなく、社会保険にも加入しています。
週20時間の雇用契約で、「なぜ社会保険に加入しているの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
2022年10月以降、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所は「特定適用事業所」となっています。
そのため、(1)週の所定労働時間が20時間以上であること、(2)月額賃金が8.8万円以上であること、(3)2ヵ月を超える雇用見込みがあること、(4)学生でないこと、の4要件を満たす場合は、短時間労働者として健康保険・厚生年金保険に加入することとなります。
さて、同じ人が、B社でも新たに週20時間の雇用契約でアルバイトとして働くことになりました。B社は常時労働者数が30人未満の企業です。
この場合、どうなると思いますか?
雇用保険については、「週20時間以上」であるから加入対象となると思われる方は多いかもしれません。
しかし、雇用保険は同時に2か所以上の事業所で被保険者となることは、原則としてできません。
※65歳以上の場合は、「マルチジョブホルダー制度」があります。詳しくは以下のエントリをご覧ください。
そのため、両社で雇用保険に加入する要件を満たしている場合は、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみで加入することになります。
もっと平たく言えば、給与が多い方で加入する、ということです。
なお、社会保険について、B社は特定適用事業所に該当しないので(任意特定適用事業所となっていない限り)加入要件を満たしません。
この事例では、A社とB社で給与を比較し、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける会社で雇用保険に加入することになります。同程度であれば、すでにA社で社会保険にも加入しているため、引き続きA社で雇用保険に加入するのがよいでしょう。
まとめ
副業・兼業をする人が増えていく中で、今回のように「パート×アルバイト」のような働き方をする人も増えていくかもしれません。
あるいは、「アルバイト×派遣社員」、「フリーランス×契約社員」など、いろいろです。
リモートワークであれば、場所を問わず自宅にいながら複数の企業で働くことも十分に考えられます。
多様な働き方をする際は、特に契約内容や保険関係のことも理解を深め、いざというときに困らないようにしっかりと備えておきましょう。