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社会保険とお金

20歳になったら国民年金、「学生納付特例制度」で気をつけたいこと

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

20歳になると、概ね2週間以内に「国民年金のお知らせ」が届きます。

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人は、国民年金の被保険者となるため、基礎年金番号とともに納付書等が送付されてくるのです。

2022年(令和4年度)の国民年金保険料は、1か月あたり1万6590円。学生の場合、毎月この額を支払うのは、かなり大変です。アルバイトをしていたとしても、それは生活費や小遣い等に消えてしまうものと思われます。そもそも学業が本分ですから、アルバイトをするための時間もなかなか取れないことでしょう。

そうなると、いったいどうやって年金保険料を支払っていくのか?

普通に考えれば、親が納付することになるでしょう。

ところが、厚生労働省の調査によると、学生の納付状況で『学生納付特例者』は63.9%、一方『納付者』は24.5%しかいないのです(厚生労働省年金局「令和2年国民年金被保険者実態調査(令和4年4月)」より)。

正直なところ、この数字を見たとき驚きました。

おそらく、納付しようと思えば納付できる家庭状況にある人はもっといるはずです。それでも、6割以上もの人が学生納付特例を申請しているのは何故なのか。

「本人の自覚を促したい」という意見は、当然あるでしょう。それを否定するつもりはありません。

しかし、それ以上に学生納付特例制度が魅力的に映ってしまうのではないでしょうか。

学生納付特例制度とは、本人の前年所得が一定基準以下の場合に申請することができ、申請が承認されると国民年金保険料の納付が猶予される仕組みです。世帯所得ではなく、本人の前年所得を対象とするため、ほとんどの人は申請できます。

学生納付特例が承認された場合、「未納」扱いとはなりません。メリットとしては、老齢基礎年金の受給資格期間に算入されることです。そして、10年以内であれば年金保険料を後から納付(=追納)することができます。

社会人になって本人が働くようになったら納付すればいい。そんな風に考える人は多いだろうと思います。今すぐ納付するよりも、猶予の手続きをする方が、心理的ハードルも下がります。そうして、あまり深く考えることなく、学生納付特例を申請してしまうのではないかと思うのです。

国民年金の未納率を何としても減らしたい国としても、都合がよいのかもしれません。だからこそ学生納付特例という制度があることを前面に出しているのではないでしょうか。

ここで大切なのは、メリットばかりでなく、リスクについても理解しておくことです。

確かに10年以内であれば追納ができます。ただし、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合、承認当時の保険料に経過期間に応じた加算額がプラスされることを忘れてはいけません。

追納は一番古いものから順に納めていく決まりがあるので、加算額がついた期間がある場合にスキップすることができないのです。

そうなると、社会人になってからコツコツと納付していかねばいけませんが、これは容易なことではありません。まして、奨学金などを受けていれば、その返済もあります。

こうした状況を予測しつつ、本人が追納する強い意思を持って実際に対応でき得るのか、よく考えてみることです。

学生納付特例の承認を受けた期間、追納をしないまま過ぎてしまうと、保険料を全額納付したときに比べて将来受け取る老齢年金の額が少なくなってしまいます。

たとえば年金保険料を40年納付した場合、老齢基礎年金の年間受給額は約77万8000円になりますが(令和4年度の場合)、仮に追納せず浪人などして3年間払わないままでいると、年間約5万8000円も減ってしまいます。

注:満額の老齢基礎年金を受け取るためには、40年の保険料納付済期間が必要

学生納付特例は受給資格期間には算入されても、年金額へは反映されないということを、よく理解しておきたいものです。

出所:日本年金機構「学生納付特例制度のポイント」より

もっとも避けたいのは、20歳になってお知らせが届いても、全くスルーしてしまうことです。

何もせずに時間だけが過ぎてしまい、そうしたときに万一、病気やけがで障害が残ってしまうと、障害基礎年金が受け取れなくなってしまうリスクがあります。

公的年金は、「世代間扶養」の考えのもと、みなで支え合う仕組みです。

20歳にお知らせが届いたら、子ども任せにせず(しっかりと年金制度を理解していれば別ですが)親子できちんと話し合って、方針を決めるのが望ましいと考えます。

仮に親が年金保険料を支払うとしても、年末調整や確定申告で「社会保険料控除」を受けることができるため、節税効果が期待できます。(もっとも、社会保険料控除は申告ベースなので、何もしなければ節税できません)

会社に入社してしまえば、税金や社会保険のことは会社が対応してくれますが、20歳の学生においては、本人・各家庭で理解を深めて対応していくことが大切です。

「学生納付特例制度」については、ダイヤモンド・オンライン「カタリーナに語りなさい!オンライン労務相談室」でも取り上げています。ぜひこちらの記事(ストーリー)もご覧ください。

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執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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