こんにちは、佐佐木 由美子です。
南青山にある根津美術館の近くに、アートを堪能できる素敵な空間があります。
それは、岡本太郎記念館。
ここは、芸術家・岡本太郎(1911〜1996年)が84歳で亡くなるまでアトリエ兼住居だった場所。
1954年から40年以上、岡本が生活した空間であり、そのせいか息づかいが感じられるようなエネルギーに満ちています。

つい、「芸術は爆発だ」という言葉が出てきてしまいそうになります。
そして、建築を手がけたのは、岡本の友人であり、ル・コルビュジェの愛弟子であった建築家・坂倉準三(1902~1969年)。
ブロックを積んだ壁の上に凸レンズ形の屋根をのせたユニークな建物は、当時話題をよんだそう。今も、古くて新しい、と感じてしまうから不思議です。
岡本作品が至るところにお目見えしているせいもあるかもしれませんが、それだけではないあたたかさを感じます。
坂倉準三の手による旧館はそのままに、隣接する木造2階建ての書斎/アトリエが新築の展示棟に建て替えられ、現在の記念館の姿となっています。
スリッパに履き替え、旧館に入ると、すぐ右手に打ち合わせとして使用されていたサロンが広がっています。


大きな窓、その奥に一体的に広がる庭の緑。
部屋には、岡本太郎がデザインした作品たちがそれぞれの個性を主張しています。
マネキンも、本人がシリコンに埋まってつくられたそう。
もうこの空間にいるだけで、ワクワクが止まりません。
その奥にあるアトリエでは、飛び散った絵具や描きかけの作品など、息吹が生々しく感じられます。



この空間で多くの作品が創作されていたのかと思うと、親近感がわきます。
臨場感のある空気は、他では再現できない貴重なもの。
階段を上がった先にあるのが、3面の壁をもつ第1展示室。

現在は企画展、「《予感》とその時代」が開催されています。
中央に配されている作品は「愛」。愛おしい造形美に魅了されます。
ブリッジを渡った先にあるのが、細長い第2展示室。


本展ではカーテンが閉じられていましたが、紫色の空間がシュールで作品とマッチしています。
さらなる見どころは、お庭です。
自然のままに生い茂る緑の中に、大胆に彫刻が展示されています。


彫刻と植物が渾然一体となって、まるで原始の中の古代遺跡のよう。いや、未来の宇宙空間に創られそうな…
最近、「ちょっと疲れているかも」、と感じる方は、ぜひ岡本太郎記念館へ。
不思議とエネルギーがチャージできる、魅惑的な空間です。

鑑賞後はカフェ『ア・ピース・オブ・ケーク』
ここへきたら、記念館に併設されているカフェでパンケーキをぜひ。素敵なマスターが淹れるちょっと渋めの珈琲とぴったりです。

作家の一面を持つ岡本太郎の作品も、ご一緒にいかがでしょうか。


アートをめぐるエッセイ