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労働基準法の「生理休暇」の誤解と取得するための工夫

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

労務管理において、時々「生理休暇」について相談を受けることがあります。

生理休暇とは、生理日の就業が著しく困難な女性が取得可能な休暇で、労働基準法68条に定められている法定休暇。条項には「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」となっています。

しかし、実態として利用率が低いことから、近年は生理休暇という名称を変更するなどの対応も見られます。

日経BP「20~40代働く女性1956人の生理の悩みと仕事と生活調査」(2021年)によると、生理休暇を利用しにくい要因として、 「男性上司に申請しにくい」が 61.8%、「利用している人が少ないので申請しにくい」が50.5%と高い割合になっています。

実際に、現場で働く女性たちから「男性の上司に生理という言葉を出すのは躊躇ってしまう」という声がよく聞かれます。一方、管理職の男性からも、その言葉の響きから気まずいニュアンスがうかがえます。

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、女性労働者のうち、令和2年度中に生理休暇を請求した者の割合はわずか0.9%。制度はあるものの、女性労働者は生理休暇をほとんど利用していない状況が明らかとなっています。

生理休暇の誤解

そもそも生理休暇とは、下腹痛、腰痛、頭痛等により女性が現実に生理日の就業が著しく困難な状態にある場合に請求できるものです。

単に生理であることのみをもって、休暇を請求することを認めたものではありません。

(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置) 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

労働基準法第六十八条

企業は、生理休暇を申請された場合、拒否することはできません。

また、休暇の請求は、必ずしも暦日単位で行われなければならないものではなく、半日又は時間単位での請求も可能です。

必ずしも有給とする必要はありません。「令和2年度雇用均等基本調査」では、生理休暇を「有給」とする事業所の割合は29.0%となっています。中小企業の多くは、無給休暇として規定されていることでしょう。

以前に、就業規則で「1か月の取得日数を定めることはできますか?」という質問を受けたことがありますが、生理休暇の日数を限定することは認められていません。

生理期間やその間の苦痛の程度などは各人により異なるため、利用できる客観的な一般基準は定められていないのです。

ただし、有給の日数を限定する趣旨であり、生理休暇自体は有給の日数以上与えることが明らかであれば差支えありません。

取得しやすくするための工夫

秋田県が今年度から「生理休暇」の名称を「健康管理休暇」に変えたことが俄かに話題になりました。

これまでも各社においてネーミングへの工夫が見られますが、生理休暇という名称によって申し出をしにくい雰囲気があるなら、名称を見直すこともひとつです。

ただし、名称を変えただけでは、十分とは言えません。

1年のうち生理でつらく、仕事の調子が出ない日は60日を超えるといった調査結果もあります。女性の体には特有の健康課題があることを、職場のメンバーに理解してもらうための啓蒙活動は重要といえるでしょう。

女性特有の健康課題としては、40代後半から50代にかけて女性ホルモンの波にさらされる更年期等の課題もあります。こうしたことも理解を深め、悩みに寄り添い働きやすい職場環境を作ることも大切です。

生理休暇を充実させることも大切ですが、それによって取得する人にハラスメントやいじめが生まれないような配慮も欠かせません。

さらに言えば、性別に関係なく、健康面に不調があるときなどに利用できる休暇制度があれば、労使ともに受入れられやすいと考えます。

男性においても、男性ホルモンの減少が原因で起こる身体的・精神的症状がでる場合も個人差はありますが起こり得ます。

健康課題という意味では、この点もあわせて検討したいところです。

東京都産業労働局「働く女性のウェルネス向上委員会」に掲載されている専門家コラムもあわせてご覧ください。

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執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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