こんにちは、佐佐木 由美子です。
介護休業制度は、育児・介護休業法に定める介護休業等の対象となる家族の年齢に関わらず取得することができます。
しかし、「介護といえば高齢者」、というイメージが強く、これまでの「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」では、医療的ケアを必要とするお子さんなどが利用できるか否か解釈が難しい、という指摘がありました。
そこで今般、その判断基準が見直されることになりました。
詳しくは、以下にあります。
厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について(令和7年2月5日職発0205第4号、雇均発0205第2号)」
このエントリでは、もう少しかみ砕いて見直された「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」についてお伝えします。
介護休業の取得を検討されている方も、判断する会社側にとっても、ぜひ参考にしてください。
介護休業するときの「対象家族」とは?
育児・介護休業法では、介護休業等に関して「対象家族」という言葉が頻繁にでてきます。
そこでまず、対象家族の範囲について確認しておきましょう。
対象家族の範囲は、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として、祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む。)、配偶者の父母、と規定されています(下図参照)。
同居の有無は、関係ありません。

介護休業は、対象家族であって2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあるもの (障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。)を介護するための休業です。
上記の下線部分は、今回の見直しに際して追記されたところです。
ここに記載されているとおり、子に障害のある場合や医療的ケアを必要とする場合など、年齢にかかわらず対象となり得ることが明確化されました。
そして、「常時介護を必要とする状態」については、以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合であることとされています。
(1) 項目①〜⑫のうち、状態について2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
(2) 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。


ただし、この基準に厳密に従うことにとらわれて、労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれる、とされています。
子のケアと仕事の両立に「介護休業」が使えることも
介護休業は、対象家族の状態によって、様々な利用が考えられます。
例えば、子どもが精神的に不安定な状態となり、学校に通えなくなってしまう(不登校)の場合です。
一見すると、それが介護休業の対象となるとは思えないかもしれません。
しかし、基準をよくみると、上記の表・項目⑨に、「物を壊したり衣類を破くことがある」という内容があります。
さらに、状態が「3」(ほとんど毎日ある)の場合は、「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む、とあります(注7参照)。
もし、お子さんに自傷行為などが見られる場合は、当てはまる可能性があります。
お子さんに限らず、対象家族の範囲は上述したとおり幅広いので、ご家族の状態について困っているときはひとりで抱え込まず、まず勤務先に相談してみることをおすすめします。
証明書はどこまで必要?
介護休業、介護両立支援制度等を申し出るに当たって、事業主は要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができるとされています。
「証明することができる書類」としては、それぞれの証明すべき事実に応じ、例えば次のようなものが考えられます。
●対象家族と労働者との続柄 住民票記載事項の証明書
●要介護状態の事実
・当該対象家族に係る市区町村が交付する介護保険の被保険者証
・介護保険の要介護認定の結果通知書
・障害支援区分認定通知書
・障害児通所給付費支給決定通知書
・医師、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士 又は介護福祉士が交付する判断基準に係る事実を証明する書類等
こうした証明書等に代わって、それぞれの事実が証明できる他の書類の提出を妨げるものではありません。
会社側としては、介護休業等の申出をする労働者に過大な負担をかけることのないようにすることが大切です。
介護に関しては、特に要介護者の状況等が様々に変化することがありますので、臨機応変かつ柔軟な対応が望まれます。
なお、労働者が介護休業等を申し出るに当たって、こうした証明書等を提出しないことを理由に、会社は制度の利用を認めないといった取扱いはできないことに留意ください。
まとめ
「常時介護を必要とする状態」にあるか否かを最終的に判断するのは、勤務先となります。
会社側としては、いつ介護休業等の相談が従業員からきても対応できるように、新たな基準への理解を深めておくことが大切です。
働き手にとっても、家族のケアと仕事の両立が困難な局面にあるとき、退職を考える前に、こうした判断基準があることを根拠として、まず勤務先に相談してされてみてはいかがでしょうか。
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