こんにちは、佐佐木 由美子です。
先週は東京都の男女雇用平等推進セミナーで「人生100年時代における定年前後の働き方と制度」について、2日間に分けてお話をさせていただきました。
どのような働き方を選択するかで、社会保険(健康保険や年金)などが大きく変わってくるのですが、長い間組織に属して働いていると、そのあたりがあまりピンとこないかもしれません。
手続きについても、すべて会社が対応してくれるため、各保険の意味やどのような場面で役立ってくれるのか、普段はあまり意識されることがないでしょう。
しかし、定年前や働き方を大きく見直そうとするときには、ワークルールを含めて制度のことや社会保険について基本的な概要を理解しておいた方が身のためです。
定年が近づいてくると、否が応でもその後の選択について考えなければならないときが訪れます。
「まだまだ先のことだから……」と思っていると、あっという間に時間が経ってしまいます。
ということで、このエントリでは、定年退職後も働くことを前提とした場合に、再雇用等で働き続けるのか、フリーランスとなって業務委託契約で働くかを、主として社会保険の視点から考えてみます。
再雇用・再就職で働く場合のメリット
会社の継続雇用制度を利用して再雇用で嘱託社員等として働くか、定年を機に再就職をするか。この選択自体はとても大きなものですが、企業等に雇用されて働くという点においては共通しています。
ここでは「雇用による働き方」という括りで話を進めます。
雇用による働き方をする場合、基本的には社会保険制度が完備されており、加入要件を満たす限り、会社で手続きをしてもらえます。
広義の意味での社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険です。
年を重ねると、若い頃とは違って病気やケガをするシーンが何かと増えてきます。それだけに、保険を活用する機会も増えくるといえます。
たとえば、病気で手術・入院のために長期でお休みをする場合、健康保険からは「傷病手当金」制度があります。通勤途中のケガによる治療や仕事を休む場合なども、労災保険が請求できます。これらは民間の保険と比べ、内容も手厚いうえに、手続きも会社がフォローしてくるので、いざというときに頼りになるものです。
定年後も働くことで、老齢厚生年金も増やせます(厚生年金保険は、70歳に達するまで保険料が発生します)。年金は一生涯もらえる、生活の基盤。少しでも年金額を増やしたいと考える人にとっても、メリットがあるといえるでしょう。
シンプルにいうと、いざ病気やケガをして働けないときの補償、会社を辞めるときに給付金がもらえたり、年金が増えたりするなど、社会保険によるさまざまなメリットが享受できます。
フリーランスとして働くときのメリット
個人事業主やフリーランスとして働く場合、上記のような社会保険によるメリットがありません。この点はデメリットといえますが、個人でいざというときに備えておくことはできます。
たとえば、フリーランスは労働者ではないので労災保険はありませんが、「特別加入制度」を利用して加入することが原則可能です。ただ、保険料はすべて個人で負担しなければなりませんが、そこまで高いものではありません。
フリーランスとして働くときのメリットとしては、自分のペースで働けることや、うまくいけば再雇用・再就職よりも稼げる場合もありますし、定年を気にすることなく生涯現役で働ける点などです。
さらに、「在職老齢年金」の影響を受けない点が挙げられます。これは社会保険の視点からみると大きいポイントです。
60歳以降も老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、「老齢厚生年金の月額」と「月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12)」の合計額が一定の基準額を超えると、年金が減額される仕組みがあります。これを「在職老齢年金」といいます。
令和6年度は支給停止の基準額が50万円、令和7年度は51万円になり、さらに翌年度以降は引き上がる見込みです。
まとめ
社会保険の視点から、「雇用による働き方」と「雇用によらない働き方」の主なメリットを挙げてみました。
現状は、減額されるのを避けるために「働き控え」も起きていますが、業務委託で働く場合はそうした点を気にすることなく働けます。ただ、所得が増えれば保険料や税金も増える点は留意したい点といえるでしょう。
メリットとデメリットは裏返しで、すべてメリットばかりという上手い話はありません。
年金についていえば、それまでの加入状況等によって個人差が大きく出るところです。
人生が長期化する中で、定年後の時間も延びています。
それだけに、働き方を含めて時間の使い方やお金のことなど、個人ごとに考えていくことが大事になります。
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