こんにちは、佐佐木 由美子です。
このエントリでは、3歳未満の子どもを育てる厚生年金保険の被保険者が利用できる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」について取り上げます。
もっと簡単に、「養育期間の特例措置」ということもあります。
養育期間の特例措置とは?
子どもが小さいうちは、育児のための短時間勤務制度を利用したり、所定外労働の免除を申請したりすることで、給与が下がる場合があります。
これにともなって、子どもが3歳に達するまでの養育期間中に社会保険の「標準報酬月額」が低下した場合、将来の年金額に影響しないようその子どもを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」の制度があります。
より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額が計算されるため、働き手にとっては活用したい有利な仕組みです。
これは、厚生年金保険の被保険者に適用される制度で、特例措置の対象となる期間は、『3歳未満の子の養育開始月から養育する子の3歳誕生日のある月の前月まで』です。
従前の標準報酬月額とは、養育開始月の前月の標準報酬月額を指します。
ただし、養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でない場合には、その月前1年以内の直近の被保険者であった月の標準報酬月額が従前の報酬月額とみなされます。
その月前1年以内に被保険者期間がない場合は、みなし措置は受けられません。
ポイントは、被保険者の申し出に基づき行われるということ。
育児休業を取得したか否かは関係ありません。
また、夫婦で同時に申請することも可能です。
添付書類の省略可能に
養育期間の特例措置を受けるには、原則として戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書と、住民票の写しが必要です。
ただし、住民票の写しについては、申出者と養育する子のマイナンバーがどちらも申出書に記載されている場合はこれまでも省略ができました。
日本年金機構は2024年11月から、マイナンバーを活用した行政機関間の情報連携により取得する戸籍関係情報の本格運用を開始しました。
対象となる範囲は、請求される方と配偶者との身分関係または請求される方と20歳以下の子との身分関係を確認する場合です。
これにともない、老齢年金請求書をはじめ、「養育期間の特例措置」に添付する戸籍謄(抄)本についても2024年11月から添付の省略が可能となりました。
マイナンバーを活用できるケースは、申出者と養育する子に日本の戸籍があり、申出者と養育する子のマイナンバーがどちらも申出書に記載されている場合となります。
なお、添付書類を省略した場合、審査完了まで1か月程度の期間を要する場合があります。
申出に係る子が3歳に到達したときに、終了届の提出は必要ありません。退職等により、申出者が厚生年金保険の被保険者資格を喪失したときや、申出者が産前産後休業または育児休業等を開始したときについても同様です。
これまで、「戸籍謄本の取得が面倒だ」といった声が聞かれていましたが、その点が解消されるケースが増えることは、よいことだと言えるでしょう。