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社会保険とお金

2025年4月から高年齢雇用継続給付の支給率変更

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)の施行により、令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わるのをご存じでしょうか。

このエントリでは、高年齢雇用継続給付について取り上げます。

高年齢雇用継続給付とは?

「高年齢雇用継続給付」は、60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度です。

具体的には、以下の2つの要件を満たした人が対象となります。

1.60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
2.被保険者であった期間が5年以上あること

2の「被保険者であった期間」とは、雇用保険の被保険者として雇用されていた期間の全てを指します。なお、離職等による被保険者資格の喪失から新たな被保険者資格の取得までの間が1年以内であること及びその間に求職者給付や就業促進手当を受給していない場合、過去の「被保険者であった期間」として通算されます。

高年齢雇用継続給付は、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。これらの違いは、再雇用等で働き続けるか、再就職をするかどうかの違いです。

かつては、定年後に60代で働く人がそれほど多くなく、かつ給与水準も著しく低下することから、就業意欲を維持、喚起するためにこうした制度が設けられました。

しかし、現在では60代、特に65歳まで本人が希望すれば雇用が義務化されたこともあって、状況が大きく変わってきています。こうした状況を踏まえ、給付率が最大15%から10%に引き下げられることになりました。

対象となるのは、令和7年4月1日以降に60歳に達した日(その時点で被保険者であった期間が5年以上ない方は、その期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた人です。

令和7年3月31日までに60歳に達した日(その時点で被保険者であった期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた人は、現行(最大15%)の支給率となります。

具体的に、令和7年4月1日以降の支給率は以下のように変更されます。

出所:厚生労働省パンフレットLL061108保01

年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整

注意したいのは、厚生年金保険の被保険者の方で、特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金を受けている方が雇用保険の高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)を受ける場合です。

このとき、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。
支給停止される年金額は、最高で賃金(標準報酬月額)の6%に当たる額です。

初回の高年齢雇用継続給付金の支給申請が認められた場合には、その後に高年齢雇用継続給付金の支給申請を行わなかったときでも、現行では、高年齢雇用継続給付金の支給申請が可能である期間中、老齢年金の一部支給停止が解除されない点に留意する必要があります。

まとめ

60代以降も引き続き働き続ける場合、雇用保険においてこうした給付があることを知っていると、生活設計を考えるときの参考になります。

ただし、すべての人に当てはまるわけではありません。実際に受給を検討される場合は、まず会社とよく相談されてみることをおすすめします。

再雇用等で高年齢雇用継続基本給付金を受ける場合は、会社が手続きをしてくれます。

定年前後の働き方や社会保険等については、拙著「定年前後の働き方大全100」もぜひご参照ください。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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