こんにちは、佐佐木由美子です。
労災保険といえば、会社等で働く「労働者」が加入するものだと思われている方がほとんどかもしれません。
労災保険(労働者災害補償保険)制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。
補償は「労働者」が対象となりますが、労働者以外のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人については、一定の要件のもとで労災保険に特別加入することが認められています。
2024年11月1日から施行される「特定受託事業者に係わる取引の適正化等に関する法律」にともない、労災保険の特別加入の対象が11月から拡大されることになりました。
「特定受託事業者」(人を雇わない個人事業主や一人法人)の条件を満たすフリーランスは、労災保険に特別加入できるようになります。
特別加入すると、どんなメリットがある?
労災保険に特別加入することにより、仕事中や通勤中のケガ、病気、障害または死亡等に対して、補償を受けられます。
主な補償内容は、以下のとおりです。
療養(補償)等給付
ケガや病気の治療に必要な給付を受けられます。例えば、労災保険指定医療機関において、無料で治療を受けることができます。
休業(補償)等給付
療養のために仕事を休み、収入を得ていない場合に休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%(特別支給金20%と合わせて80%)を受けることができます。
障害(補償)等給付
障害が残ったとき、年金または一時金が支払われます。
遺族(補償)等給付
仕事や通勤が原因で死亡した場合、遺族の方に年金または一時金が支払われます。
加入対象となる事業とは?
特別加入の対象となる事業は、
① フリーランスが企業等から業務委託を受けて行う事業
② ①と同種の事業について、フリーランスが消費者から委託を受けて行う事業
※いずれも、他に特別加入可能な事業または作業を除きます。
となります。これらを「特定フリーランス事業」といいます。
すべてのフリーランスが対象となるわけではありません。
消費者のみから委託を受ける場合や、企業等からの業務委託を受けているものの、その業務とは異なる事業について、消費者から委託を受ける場合は、対象となりません。
下の表に記載する特別加入の事業または作業に従事する方は、特定フリーランス事業ではなく、表中の事業または作業に係る特別加入団体を通じて加入することになるのでご注意ください。
保険料はどうやって計算されるの?
年間保険料は、休業(補償)等給付などの給付額算定の基礎となる給付基礎日額の365日分の0.3%です。
この給付基礎日額とは、1日当たりの収入を基準として、加入時に3,500円から25,000円までの16段階から選択し、都道府県労働局長が承認した額となります。
給付基礎日額が3,500円の場合、年間保険料は3,831円となり、給付基礎日額が25,000円の場合、年間保険料は27,375円となります。以下の一覧をご参照ください。
保険料は全額フリーランス本人の負担となりますが、手厚い補償を考えると、特にケガのリスクを不安を感じている人にとっては安心材料といえるでしょう。
どうやって申し込むの?
特別加入をする場合は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に申し込む必要があります。
11月になってすぐに加入を希望する場合は、承認を受けている『連合フリーランス労災保険センター』や『プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会』のホームページから確認されるとよいでしょう。
いずれにしても、特別加入団体を通じて加入申請書等を所轄の労働基準監督署長を経由して、都道府県労働局長に提出することになります。
まとめ
2024年11月1日から、特定フリーランス事業も特別加入団体を通じて、労災保険に特別加入ができるようになりました。
特に身体を動かすことが多かったり、移動することが多い事業を展開されているフリーランスの方などで、いざというときの補償について不安を感じられている場合は、特別加入について検討されてもよいかもしれません。
特別加入は、あくまでもいざというときの補償です。対象となるケース・ならないケースがある点も理解したうえで、各自で判断したいところです。