こんにちは、佐佐木 由美子です。
出産・育休関連のご相談の中に、産後うつに関する内容も時々あります。
産後、マタニティーブルーは多くの母親が経験する感情ですが、たいていは2週間以内に治まるため、あまり心配することはないかもしれません。
一方、産後うつ病になると症状が数週間から数カ月間続き、日常生活に支障が出ます。10~15%の女性に発症すると言われており、注意を要します。
ところで、病気などで労務不能の状態にあるとき、健康保険から「傷病手当金」を申請することができます。
育児休業中は、雇用保険から「育児休業給付金」を申請する方が多いですが、産後うつ病など病気を発症した場合に、健康保険から「傷病手当金」も同時に受けられるのでしょうか。
公的な給付を同時に受けることは可能か
雇用保険や健康保険のような公的保険では、一定の事由に対して被保険者へ各給付金制度が設けられています。
「傷病手当金」は、健康保険の被保険者とその家族の生活を保障するために、業務外の事由による病気やケガのために仕事を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
労務不能である状態が連続して3日以上続くとき、4日目から支給対象となります。
一方、「育児休業給付金」は、雇用保険の被保険者が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと支給を受けることができます。
このように、それぞれ支給事由が異なる給付を、ひとりで同じタイミングに受けることができるのか、疑問に思われる方は多いかもしれません。
結論からいうと、育児休業期間中における「育児休業給付金」と「傷病手当金」の併給は可能です。
これについては、「傷病手当金又は出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が育児休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給されるものであること。(略)」(平成4年3月31日保険発第39号・庁文発第1243号)という通達も発出されています。
事後報告で間に合うことも
育児休業に入ってしまうと、会社と従業員の間で、連絡を取り合う機会は減ってしまいます。
まして、育休中に産後うつ病を発症するような場合、病状にもよりますが、本人が直接相談をすることは難しくなることが想定されます。
そうなると、会社側も従業員の状況を把握できないまま、時が過ぎてしまうかもしれません。
何かあったときは、家族・パートナーから本人に代わって相談できると、傷病手当金の申請などにおいてもスムーズに支援ができます。
このとき、育児休業給付金と同時に傷病手当金も受給可能だということを知っていればよいですが、なかなか一般に働いている方が、こうした仕組みがあることを把握しているとは考えにくいものです。
病気が快復されてから、本人より会社に事情を伝えるという形であっても給付申請に間に合うことはあるので、必要以上に心配されることはありません。
というのも、傷病手当金の申請においては2年間の時効があるからです。
過ぎてしまったことだと思わず、会社にご相談されてみることをおすすめします。