こんにちは、佐佐木 由美子です。
定年後の働き方の選択肢は近年広がりを見せていますが、年齢を重ねて働くときにひとつ気にかけておきたいのが、病気やケガなどいざというときのこと。
雇用者全体に占める60歳以上の高齢者の割合は18.7%(令和5年)と2割弱。
一方、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は29.3%と約3割にのぼります。
60歳以上の男女別の労働災害発生率を30代と比較すると、男性は約2倍、女性は約4倍となっていることがわかります。
転倒による骨折率をみると、女性の場合、60歳以上は20代の約15倍にもなります。
普段の生活においてもいえることですが、筋力の弱いシニア女性ほど、注意が必要です。
こういうときに、労働契約で働いていると、本人も特に気づかないうちに労災保険の対象者となっているので、労災保険(正式には「労働者災害補償保険」といいます)を活用できるというメリットがあります。
労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。
パートタイマーや嘱託社員など名称にかかわらず、すべての「労働者」を対象としています。
給与明細書から保険料が天引きされることがないため、普段は自分が対象となっているかどうかあまり意識していないものですが、保険料は全額事業主によって賄われています。
しかし、転倒して骨折して長期で療養しなければならない場合など、いざというときに生活を守ってくれる役割を果たしてくれます。
仕事中のケガ等により労災指定病院等で治療を受けるときに、医療費は発生しません(療養補償給付)。
また、療養のため仕事を休むときは、休業4日目から平均賃金の約8割の給付が受けられたりもします(休業補償給付)。
このように、いざというときの補償が大変充実しています。
これは労働者として働く大きなメリットなので、仕事内容によって、どのような形態で働くかは検討された方がよいでしょう。
個人事業主など「労働者以外」の場合であっても、一定の要件を満たす場合に、任意で「特別加入」をすることは可能です。
2024年11月からは対象がさらに広がり、企業等から業務委託で働くフリーランス(特定受託事業者)も労災保険に特別加入できるようになります。
労災保険に特別加入することにより、仕事中や通勤中のケガ、病気、障害または死亡等に対して、補償を受けられます。
ただし、特別加入に関して、保険料はすべて個人の負担となる点が大きな違いです。
まとめ
高齢になるほど、労働災害発生率が高まります。
仕事内容にもよりますが、特に現場仕事で体を動かして働く場合などは、「労災保険」の加入は、いざというときに大きな助けになります。
労働契約で働く場合のメリットといえるでしょう。
雇用によらない働き方を選択する場合も、「特別加入制度」を任意で加入するかどうか、検討されるとよいでしょう。
このエントリでは、労災保険をメインに取り上げましたが、現状では働き方によって社会保障に大きな違いがあるのは事実です。
そうした違いを理解しておくと、自分にとって必要なもの(プラスして用意すべきかどうかなど)が見えてきます。
働き方とセットで、社会保障について考えておくことをおすすめします。