能登半島地震において被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復興を願ってやみません。
仕事始めということで、顧問先や関係各所に連絡を取り合っていたところ、能登半島地震での影響は想像以上に大きいことを実感しました。
被災地にご親族や友人、また取引先等がある場合、特に心配な状況が続いているかと思います。
なかには、今すぐにでもボランティアとして現地に出向きたい人もいるかもしれません。
ただ現地では人手が足りないという話がある一方、交通インフラ面など考えても、今は経済的な支援を希望される声が大きいと聞きます。
そこで、被災地への義援金を社内で募ることを検討されるケースもあるかもしれません。
社員から直接現金を集めるのではなく、募金額を各社員の給与から天引きすることは問題ないでしょうか?
これは労働基準法と関連してくる話になってきます。
労働基準法第24条において、賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとされています。
これはいわゆる「賃金支払いの5原則」と言われるもの。
例外として、
1.法令に別段の定めがある場合
2.事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合
に限り、賃金から一部の金額を控除することが認められています。
たとえば、所得税や社会保険料は、法令に定めがあるので、個人から同意等を得ることなく、当然に給与から控除することができます。
もちろん、労使協定があれば、何でも控除できるわけではありません。
控除できるのは、社宅や寮の費用、社内預金、組合費など、社員が当然に支払うべきことが明らかなものとされています。
社員が自主的に募金に応じる場合は、一般的にはその社員が当然に支払うべきことが明らかなものと考えらます。
そのため、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数労働者代表)との書面による協定を締結すれば、社員の賃金から募金額を控除することは可能です。
ちなみに、この労使協定は労働基準監督署への届出は不要です。
「寄付はしたいけれど、どこを選んだらよいかわからない」
「ネットでは詐欺サイトなどあって心配」
「何か行動はしたいけれど……」
等々といった声も、巷では耳にします。
寄付や支援の形は実に様々です。
特に取引先など、会社単位でのつながりが被災地と大きい場合など、「社内で一丸となって支援したい」という声もあるでしょう。そうした善意を形にすることは素晴らしいと思います。
ひとつ注意したいことがあります。それは、たとえ労使協定があったとしても、募金に応じる意思がない社員から、義援金として一律に控除するようなことは決してしないこと。あくまでも任意です。
もし、社内で義援金を募りたいという場合に、参考にしてもらえたらと思います。
参考:「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」厚生労働省