こんにちは、佐佐木 由美子です。
年金を受給していたり、パートで働いていたりする老齢の親を扶養に入れたい、というご相談は時々あります。
特に母親の場合、年金受給額がそれほど高くないことが多いため、要件を満たしやすいといえます。ただ、注意したいこともあります。
それは、遺族年金を受給している場合。
ひと口に「扶養」といっても、所得税法上の扶養親族と、健康保険法上の被扶養者とは、収入等の基準や親族の範囲が異なります。
健康保険における認定基準
被扶養者に該当する条件は、原則として日本国内に住所(住民票)があり、被保険者により主として生計を維持されていることに加え、次の(1)(2)いずれにも該当した場合です。
(1)収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ
同居の場合: 収入が被保険者の収入の半分未満
別居の場合: 収入が被保険者からの仕送り額未満
(2)同一世帯の条件
ア.被保険者と同居している必要がない者
- 配偶者
- 子、孫および兄弟姉妹
- 父母、祖父母などの直系尊属
イ.被保険者と同居していることが必要な者
- 上記ア以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
- 内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
この「年収要件」については、パートなどによる給与収入はもちろんのこと、公的年金については「老齢年金」のみならず、「遺族年金」も「障害年金」も含まれます。
所得税法上との大きな違い
一方、所得税法上での扶養親族においては、合計所得金額が48万円以下であることが条件となります。「所得」とは、課税対象となる「収入」から「必要経費に相当する金額」を差し引いたもの。
パートなどで働く場合は、給与所得控除を55万円受けられるので、給与収入に換算すると103万円までが扶養の範囲となります。
公的年金については、老齢年金が雑所得として所得税の課税対象になります。
ところが、同じ公的年金であっても、「遺族年金」と「障害年金」は非課税所得となっています。つまり、所得に含まれず、いくらもらっていても0円として考えます。
この点が、とてもわかりにくいところなので、ぜひ気をつけたいところです。
健康保険で扶養に入れる年齢
もうひとつ注意したいことは、年齢です。
健康保険において扶養に入れるのは、75歳に達するまで。
これは被保険者の場合も同じです。
というのも、75歳になると(65~74歳でも一定の障害の状態にあることについて後期高齢者医療広域連合の認定を受けた方は)、後期高齢者医療制度に移行するからです。
そのため、被扶養者が75歳になった場合は、「被扶養者(異動)届」で被扶養者から外す手続きが会社において必要になります。
そして、被扶養者であったときには発生しなかった保険料が、後期高齢者医療制度では発生します(所得の少ない場合は、所得額に応じて均等割額の軽減などあり)。
まとめ
親を扶養したい場合は、公的年金を含む収入と年齢に気をつける必要があります。
所得税法上では、「老齢年金」は雑所得として課税対象ですが、「遺族年金」「障害年金」は非課税になります。
一方、健康保険法上では「老齢年金」ばかりでなく、「遺族年金」「障害年金」も収入とみなされます。
親御さんの年金収入の種類によっては、所得税法上では扶養になるものの、健康保険では扶養になれない、といったケースも考えられます。
扶養について会社に申し出る場合は、親の年間収入とその内訳(年金の種類)、マイナンバーを把握しておくと、スムーズに対応を行ってもらえるでしょう。