こんにちは、佐佐木 由美子です。
広島市にある『広島市現代美術館』へ行ってきました。
広島市現代美術館は、全国で初めて現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月に開館。
それからおよそ30年、約2年3ヵ月の大規模改修工事を経て、2023年3月にリニューアルオープンしました。
今回は『広島市現代美術館』の魅力と感想についてお伝えします。
なぜ現代アート?
広島市現代美術館では、第二次世界大戦以降の現代美術の流れを示すのに重要な作品や、ヒロシマと現代美術の関連を示す作品などを収集方針としてコレクションしています。
市内には、広島市現代美術館のほかに「ひろしま美術館」や「広島県立美術館」もあります。最初は素朴に、「現代アート?」と思いました。
印象派に代表されるような美しい作品と違って、「現代アートは難しい。よくわからない」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
私もそういうところがありました。けれど、ここに来て、現代アートのこれまでのイメージが払拭されるとともに、全国で先駆けて公立館として取り組もうとした意味がわかった気がしました。
世界で初めて原爆が投下されたこの土地だからこそ、平面や立体など既成概念にとらわれることのない新しく自由な表現方法で、心が揺さぶられるような現代アートが求められたのでしょう。
「共生の思想」を体現した建築
建物は、日本を代表する建築家の一人、黒川紀章(1937年~2007年)による設計で、緑豊かな比治山公園の小高い山の上に位置しています。
建物全景を初めて写真で見たとき、古墳のように壮大かつ厳かな佇まいでありながら、未来を予感させる先駆的な印象を受けました。
正面入り口から階段を上り、中心にある円形のアプローチプラザへ。円柱に支えられて、神殿のようなイメージ。屋根の切り込みは、原爆の爆心地を指しているそうです。
右手にある正面エントランスの上部には、ステンレス鏡面仕上げ館名プレート。入口の床や円柱の足元にある石は、被爆石が配されています。過去と未来が交錯するような印象を受けます。
エントランスフロアの右手はガラス張りになっていて、今回のリニューアルで増築された開放的な空間(モカモカ)が広がっています。子どもたちが喜びそう。
コレクション展では、現代アートを代表するアーティストらの作品が堪能できます。
また、コレクションリレーションズの『村上友恵+黒田大スケ「広島を視る」』はユニークな取り合わせで、ユーモラスな映像に思わず笑みも。
展示室の空間や、意匠を凝らした井上武吉氏による階段モニュメントもひと際目を引きます。
アルフレド・ジャー展
世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を、美術を通して世界へ訴えることを目的として創設された「ヒロシマ賞」。
第11回目の受賞者であるアルフレド・ジャー(1956年~)の受賞記念展として開催されたのがこの企画展です。
ジャーはチリのサンディアゴ出身で、映像、写真、建築的な空間造形を伴うインスタレーションを特徴とするアーティスト。ニューヨークを拠点に活動しています。
日本で初めての本格的な個展ということで、私も初鑑賞。
言葉を失うほど、大きな衝撃を受けました。
同時に、これはアートなのか?という驚きもあり。
「アートとは、私がアートであってほしいと思うもの」とジャーが語っています。
アーティストが「これはアートだ」と言えば、いつでもそうなるのだ、ということを実感させられました。
現代アートは、既成概念を取り払った表現方法が魅力と言えますが、アーティストの思想が独自の手法で表現されたもの。
「本当に自由でいい」と作品を通して感じました。
そして、鑑賞する受け手がどう反応し、解釈するかも自由(すべてのアート作品について言えますが)。
《ヒロシマ、ヒロシマ》というビデオ・プロジェクションでは強風と轟音にさらされますが、原爆ドームや平和記念公園内にある資料館を見た後に、ここで見たことによってインパクトが大きなものとなりました。
いずれも社会的、歴史的なテーマを題材にしたものが多く、心に強く訴えかける作品ばかり。
企画展は10月15日に閉幕で、ぎりぎりのタイミングで鑑賞できてラッキーでした。
野外には「彫刻の広場」があります。
緑の中に囲まれ、一人で来ても小さなお子さんを連れで来てもよい時間が過ごせる場所だと思います。
カフェ「KAZE」
野外彫刻と緑を眺めながら、食事やカフェを楽しむのに最適な場所。
メニュー表もアート作品のようにお洒落で、スタッフの方たちもとてもフレンドリー!陽の光を感じながら、心地よく過ごせませます。
広島駅や市街地から歩いていくのは少し距離があり坂道でもありますが、市内循環バスもあり、タクシーを利用するとすぐ。
わざわざ足を運ぶだけの価値のある美術館です。
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