こんにちは、佐佐木 由美子です。
ふと気が向いて、20年以上も前に発売された本を読み返していました。
色褪せるどころか今の時代における働き方にも通じるものがあり、これからの働き方・生き方を考えるうえで示唆に富む一冊と言えます。
それは、ダニエル・ピンク著の『フリーエージェント社会の到来「雇われない生き方」は何を変えるのか』(ダイヤモンド社)です。
その後、新装版(フリーエージェント社会の到来 組織に雇われない新しい働き方)が発売され、時間を経て今なお読み継がれている一冊と言えます。
本書は、これまで王道とされてきた「大企業に属する」という働き方から、組織に頼ることなく独立して働く「フリーエージェント」が増えている実態を明らかにした社会論です。
コロナ禍以降、リモートワークが浸透し、働き方の多様化が進む今だからこそ、多くの方にとって現実味を持って読むことができるのではないでしょうか。
初版が刊行された2002年当時、アメリカではすでに4人に1人が『フリーエージェント』としての働き方を実践しており、膨大なインタビューからその生活実態を明らかにしました。
本書でいうフリーエージェントとは、「インターネットを使って自宅でひとり働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りにし、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々を指します。
具体的にはフリーランス、臨時社員、ミニ起業家の3つのカテゴリーに分類できると言います。(ざっくりとフリーランスをイメージするとわかりやすいかもしれません)
生活の安定を手にするために、忍耐強くひとつの組織にこだわり続ける働き方は、終焉を迎えつつあります。
そして、人々は給与やストックオプションも大事ではありながらも、意味のある仕事を求めています。
労働倫理の変化
フリーエージェントの人たちにとって、意味のある仕事とは、次のキーワードに集約されています。
それは、自由、自分らしさ、責任、自分なりの成功の4つ。
自由とは、行動の自由、選択の自由、それに意思決定の自由。
意味のある人生を送りたいという心の渇きを癒してくれるのは無料のコーラではなく、自由なのだ。
フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
フリーエージェントたちは、情熱をかたむけて仕事に打ち込むことを通じて、自分らしさを表現しようとしています。
「自由」と「自分らしさ」は確かに気持ちのいいものですが、それだけを追い求めていては、なにも成し遂げられないということにもなりかねません。
そこで、「責任」が登場するわけですが、責任と自由は表裏一体。市場の評価という結果にも責任を負っているのです。
そして、自分なりの成功とは、出世やお金という、これまで仕事の目標とされてきたものでないということ。
自分サイズの服が着られるということであり、ボブ・ディランの歌でいえば「成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ」に尽きます。
女性は建国の母?
本書ではフリーエージェントとして働く多くの女性が登場します。
アメリカでは2005年当時で女性が経営する会社は全体の38%にあたり、自宅を拠点にビジネスを営む人は男性の方が多いものの、増加率でみると女性は男性の2倍にのぼると言います。
ピンク氏は、「女性が『ガラスの天井』に跳ね返されないためのいちばんいい方法はその部屋の外のでてしまうこと」だと言っています。
これについては、私も同感です。自分の居場所から変えていく、という方法もありますが、ガラスの天井を突き破るのは、あまりにも大変すぎるものだと、若かりし頃の自分には思えました。
ならば、レースから降りて、別の道を進んだ方がチャンスはあるかもしれない、と。それが今の道にもつながっています。
時代は変わりつつあります。一概に部屋の外に出てしまうのがいいとは言い切れませんが、その歩みが遅いことを思えば、組織に属さない働き方を選択肢の一つとして検討してみる価値はあろうかと思います。
定年後の働き方としても
また、本書では引退(リタイヤ)からeリタイヤとも呼ぶべき人生の新しいステージを迎えることを示唆しています。
アメリカにおいては、厳密にいうと定年を年齢差別として認めておらず、定年制度を設けること自体が禁止されていますが、日本では定年制を設けている企業がほとんどです。
長い職業人生において培われたスキルや経験を、フリーランスとして生かす働き方は、今まで以上に現実味を帯びた選択肢になっていくのではないかと考えます。
今となっては、もはや「新しい働き方」と言えないかもしれませんが、年代や性別を問わず、組織に属する以外の働き方に興味がある方は一読されてみては?
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