こんにちは、佐佐木 由美子です。
2024年4月1日より、労働条件の明示についてのルールが改正されることになりました。
今後、転職・再就職される方をはじめ、人事労務の業務をされている方もぜひ理解しておきたい内容と言えます。
現在のワークルールについて確認をしながら、改正ポイントを3回に分けてお伝えします。
改正点のポイントは、以下のとおりです。
今回は第2回目として、「有期労働契約における更新上限の有無」を取り上げます。
第1回目のエントリは、以下よりご覧いただけます。
有期労働契約における基本的なルール
今回の改正ポイントについてお話する前に、有期労働契約における基本的な考え方について確認しておきましょう。
意外と知られていませんが、有期労働契約を締結する際、1回の契約期間の長さの上限は、原則として3年間と定められています(労働基準法第14条)。
この原則以外に、特例も設けられています(ここでは割愛します)。
期間の定めのある労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において契約を解除することができません。
ところで、有期労働契約を締結する場合は、現行では(1)契約期間の明示、(2)更新の有無と基準の明示、が義務付けられています。(2)は2013年4月改正で追加された内容で、更新しないことが明らかな場合は、更新の基準を明示する必要はありません。
「更新上限の明示」改正ポイント
今回の改正によって、有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無と内容の明示が必要となります(労働基準法施行規則第5条)。
更新上限とは、有期労働契約の「通算契約期間」または「更新回数」の上限を指します。
たとえば、通算契約期間の上限が3年と明示されている場合は、契約が更新された場合でも、最長で3年までしか働けないことが明かになります。
こうした明示によって、労使双方において契約更新の内容が確認できるとともに、「無期転換ルール」(次回のエントリで詳しく解説)に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
通算契約期間や更新回数に上限を設けない場合には、その旨を明示することになります。
厚生労働省の労働条件通知書モデルでは、以下の赤字部分が改正対応の内容となっています。
出所:厚生労働省ホームぺージより
さらに、本改正にあわせて雇い止め告示(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)も改正されます。
その内容は、
1.最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
2.最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合
上記に該当する場合、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります。
たとえば、通算労働契約期間の上限が無かったところから新しく上限を設けるなど、労働者側に不利益となる変更を伴う場合に、あらかじめその理由を説明しなければなりません。
これも労使トラブルとなりやすい事項ですので、改正によって未然にトラブルを防止する意図があります。
まとめ
有期労働契約で働く人は、決して少なくありません。正社員のように期間の定めがない労働契約と違って、1回ごとの契約内容はとても重要です。
たとえ契約更新の上限を定めていても、更新直前で条件が変更され期間が短縮されてしまうようなことになれば、生活の見通しが立ちません。
このエントリで取り上げた改正内容は、そうした不安定な立場から労働者を守り、生活の見通しを立てやすくするものと言えます。
会社側にとっても、有期契約労働者の人材活用をどのように進めていくか、方向性を明らかにするうえでのきっかけとなるのではないでしょうか。
ぜひそうした点においても、ご検討いただければと思います。
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