こんにちは、佐佐木 由美子です。
根津美術館(港区南青山)で開催されている『特別展 国宝・燕子花図屏風~光琳の生きた時代1658-1716』を鑑賞してきました。
この時季、庭園の燕子花がまさに見頃を迎え、庭園散策とあわせて美術鑑賞を楽しむことができます。
これまで何度も訪ねていますが、今回新たな発見がありました。
館内は一部を除き撮影不可ということもあり、庭園の画像を中心に(新たな発見を含めて)お伝えします。
根津美術館について
根津美術館は、「鉄道王」と言われた実業家・初代根津嘉一郎(1860~1940)が蒐集した日本・東洋の古美術品コレクションを保存・展示するため、南青山の根津家屋敷内において1941年に開館しました。
戦前に開館した数少ない美術館のひとつであり、国宝や重要文化財を含む日本と東洋の古美術約7,600件が収蔵されています。
2009年には、建築家・隈研吾氏の設計により、リニューアルオープン。印象的なロゴデザインは、ドイツ人デザイナーのペーター・シュミット氏によるものです。
根津美術館のもうひとつの魅力は、青山という都心にありながら、2万㎡を超える広大な敷地に緑豊かな日本庭園が広がっていることです。
伝統と現代性が調和した和モダンの結晶、それが根津美術館と言えるでしょう。
竹林のアプローチから静寂なアート空間へ
美術館は、最寄りの表参道駅から歩いて10分程の場所にあります。
表参道駅からみゆき通りを歩いていくと、緑の竹林と印象的なロゴが見えるので、すぐに美術館だとわかります。
そっと足を踏み入れると、美術館の入口にまっすぐと続く竹素材の細いアプローチが目に飛び込んできます。
ゆっくりと歩くうちに、いつしか静寂なアート空間へ。
美術館の建物は、和風家屋を思わせるゆるやかな勾配の大屋根に特徴があります。
一階ホールからは広いガラスを通して庭園の景観を取り込み、美術作品と緑の調和を楽しむことができます。
ホールを抜けて庭園を散策してもよいですし、作品鑑賞から始めても気分次第で。
本メイン展示である『燕子花図屏風』は、展示室1にて公開されています。
燕子花図屏風は、総金地の六曲一双屏風に群青の青と緑青の緑の二色のみを使い、たっぷりとした花弁の燕子花が描かれています。
晩年に描かれた『夏草図屏風』の燕子花と比べても、その違いは明らかです。夏草図に描かれた写実的な草花も大変魅力的なので、両者を同時に鑑賞できるのは贅沢です。
日本庭園で見つけた水琴窟の音色
早速、日本庭園を散策してみましょう。
「根津美術館八景」のうち、7つを庭園内で楽しむことができます。
庭園には決まった順路がありません。傾斜のある土地なので、足元に気をつけながら、人のいない道へ。石段を下っていくと、途中に立派な藤棚があり、ここで休憩するのもよし。
さらに下っていくと、池が見えてきます。
池に臨んで4つの茶室がありますが、各茶室から見える景色が見事です。
満開を迎えようとしている燕子花が一面に。まるで日本絵画を思わせるような光景が広がっています。
庭園散策を楽しませてくれるもう一つの見どころは、園内に点在する150点を超える石造彫刻です。
鎌倉時代の石仏や灯篭、中国・明時代のブロンズ像、韓国・調整時代の石塔や灯篭など、初代根津嘉一郎の時代から集められたコレクションの数々。
苔に彩られた地面に佇む灯篭や彫刻など、風情豊かで楽しめます。
池沿いを歩いていると、屋形船が見えてきました。そのすぐ先には、四角い石造りの「井筒」が見えます。この井筒からは池の水が湧きだしており、「吹上」の名の由来となっています。
そして、園内の一番奥手まで足を進めていくと、薬師堂と竹林が見えてきます。
ここには『水琴窟』があります。こちらが今回の新たな発見ですが、何とも魅力的。
水琴窟は、蹲居(つくばい)から落ちた水が地中にしつらえた瓶に反響して生まれる音を奏でています。
静寂の中に響く涼し気で繊細な音色。
普通であれば見過ごしてしまいそうな場所にあります。ここまで足を運ぶ人が少ないせいか、静かな時間が過ごせます。時間が許せば、ぜひ水琴窟の音を聴いてみてください。
特別展『国宝・燕子花図屏風』点は2023年5月14日まで開催中です(日時指定予約制)。
庭園内にあるNEZU CAFÉ もお勧め。こちらも建築家・隈研吾氏による設計。緑に包まれながら、ホッと一息するには良い場所です。
美術館(アート・建築)めぐり
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