こんにちは、佐佐木 由美子です。
前回は、年次有給休暇の付与日数や繰り越しなど基本的な仕組みについてお伝えしました。
年次有給休暇と言えば、以前に定年退職を迎える予定の方から、「そのまま同じ会社で再雇用される場合、残っている休みはどうなるでしょうか?」という質問を受けたことがあります。
定年退職後に、同じ会社で嘱託社員という形で引き続き働かれる方は、結構多いですよね。
お休みに関することは、気になる方も多いのではないでしょうか。
今後、定年退職後に継続雇用制度で働くことを検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
嘱託社員として引き続き働く場合
60歳で定年退職を迎え、その後は継続雇用制度を利用して同じ会社で65歳まで嘱託社員として働く……そういう方は、結構多いのではないでしょうか。
このような場合、定年によってこれまでの労働契約は終了し、新たな労働契約を結ぶことになります。
そのため、同じ会社で働き続ける場合でも、労働条件は一旦リセットされます。別の労働契約になるからです。
ところが、労働基準法における年次有給休暇に関する取り扱いに関しては、例外があります。
年次有給休暇を付与する要件として、「継続勤務」と「出勤率」があります。
この継続勤務とは、労働契約が存続している期間のことであり、いわゆる在籍期間を指します。
労働契約が存続している否かの判断は、実質的に判断されるものです。形式上労働関係が終了し、別の契約が成立している場合であっても、前後の契約を通じて実質的に労働関係が継続していると認められる限りは、労働基準法第39条における「継続勤務」として判断されます。
定年退職後の嘱託社員としての再雇用は、会社内における身分(雇用形態)の変更であって、実質的には労働関係が継続していると認められます。ですから、勤務年数を通算する必要があるのです。
つまり、定年退職によって労働契約が終了した場合も、引き続き嘱託社員等として再雇用される場合は継続勤務として判断されるため、年次有給休暇は定年によってリセットされることはありません。これは、定年時に退職金をもらっている場合も含みます。
未消化の年次有給休暇については、2年間の時効によって消滅するまで使うことができます。
ただし、定年退職後、再雇用までに相当の空白期間があり、客観的に労働関係が断絶していると認められる場合には通算されません。この点は注意したいところです。
では、ひとつ事例で考えてみましょう。
たとえば、これまで20年間正社員として働いてきたA社を3月31日の年度末をもって退職し、同年4月1日から嘱託社員としてA社で今までと同じく週5日で再雇用されるとします。定年退職時は12日分の年次有給休暇が残っています。
この場合、残っている年休や新たな付与はどうなるのでしょうか?
もし、4月1日に再雇用ではなく新たに採用されることとなった場合は、6ヵ月継続勤務後の同年10月1日に年次有給休暇10日が発生します。
しかし、今回のケースでは、前後の労働契約は実質的に継続しているものとみなされるため、残日数12日分は4月1日以降も繰り越すことができます。
そして、もしA社の年休基準日(付与される日)が毎年4月1日と規定されている場合は、勤務年数を通算した日数(労基法上では勤続6.5年以上で20日)が付与され、さらに前年度の残日数を繰り越すことができます。
※年次有給休暇制度は、会社によって基準日や付与日数が異なる場合があります。必ず自社の就業規則をご確認ください。
まとめ
定年後の再雇用における年次有給休暇の取扱いについて、ご理解いただけたでしょうか。
もし、空白期間もなく引き続き再雇用されるような場合で、年次有給休暇がリセットされているようなときは、会社に確認をしてみましょう。故意にではなく、単純に誤解されている場合も考えられます。
また、今回は定年退職後の再雇用のケースとしてお話をしましたが、定年に限らず雇用形態が変更される場合においても同様です。
新たな労働契約を結ぶときや、労働条件を変更するときには、こうした年次有給休暇の取扱いについても留意したいものですね。
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