こんにちは、佐佐木 由美子です。
大塚国際美術館を目当てに、空路で徳島県へ行ってきました。美術館は、渦潮で有名な鳴門海峡に面した鳴門公園内にあります。
この美術館には、他に類を見ない特徴があります。
・世界初、古代壁画から現代絵画まで原寸大で複製された陶板美術館
・ユニークな3つの展示方法(環境展示、系統展示、テーマ展示)
・日本最大級の常設展示スペース
・世界26か国190余の美術館が所蔵する西洋美術中心の名画レプリカ
写真撮影も自由にでき(フラッシュ不可)、一般の美術館とはかなり趣が異なります。いったいどのような美術館なのか、特徴と共に私が感じたことについてシェアします。
なぜ「陶板名画」なのか?
陶板とは、タイルと同じように土を使って焼いた陶器の板で、そこに特殊技術を用いて絵を焼き付けたものが陶板名画です。
1メートル角の丈夫で歪みのないタイルを作るだけでも技術力が求められるところ、陶板を美術品に仕上げるのは並大抵のことではありません。
「なぜ陶板なのだろう?」と思う方もいるのではないでしょうか。
始まりは、鳴門海峡で採取できる一握りの白砂だったと、初代館長である大塚正士氏(故人で大塚グループ各社元取締役相談役)の言葉が記されています。
徳島、鳴門海峡の砂を原材料として、大塚グループの企業(のちに滋賀県信楽町の近江化学陶器株式会社と合併して新会社設立)がタイル製造を始めたところ、オイルショックによってビル建設が全面停止となりタイル需要も激減。そこから美術陶板へ舵を切り、特殊技術により大型美術陶板の開発に成功したそうです。
そして、大塚グループ75周年記念事業として、時が経っても色褪せることのない陶板で西洋名画を原寸大により再現する美術館が設立され、1998年3月に「大塚国際美術館」が開館したのです。
この美術館が鳴門という地にあること、そして陶板名画であることの所以がよくわかります。
古代壁画から西洋名画まで膨大な作品数
大塚国際美術館に来れば、世界中の西洋名画と出会うことができます。
所蔵数は1000点超。しかも、すべてが実物と同じ大きさの陶板で再現されているので、想像を絶するような大作をダイナミックに体感できるのです。
常設展示スペースは日本一の大きさ(延床面積29,412㎡)で、鑑賞ルートは約4キロメートルにもおよぶ長さ。床に進むルートが矢印で示されていますが、迷子になってしまいそうな広さです。
建物は地下3階から地上2階まで、そのほとんどが山の中にあり、正面玄関から長さ41メートルのエスカレーターを登って、地下3階の入口に辿り着く構造になっています。
通常の美術館は、展示会による作品の入替がありますが、ここでは常設展示となっており、基本的に作品が6つの時代(古代→中世→ルネサンス→バロック→近代→現代)に分けて展示されています。
このため、古代から現代に至るまでの西洋美術の変遷が、美術史的に理解できる仕組みになっています。
また、古代遺跡や礼拝堂などの壁画を実際の大きさに空間丸ごと再現した「環境展示」は、この美術館ならではの目玉です。
有名な絵画であれば、日本で開催される展覧会等でお目見えすることもあるでしょう。
しかし、礼拝堂に描かれたフレスコ画や古代遺跡等は、その場所へ行かなければ鑑賞することはできません。
例えば、ヴァティカンにあるシスティーナ礼拝堂は、およそ1000㎡のスペースに300近い人体がひしめく大壁画です。
こうした空間丸ごと実物大で臨場感を味わうことができるのが、大塚国際美術館の大きな魅力と言えます。
展示されている数々のレプリカについて、オリジナルと比較して評するのは愚問でしょう。
むしろ、陶板という素材で、大型作品を表現豊かな色彩、作者の筆遣いまでよく再現できるものだと、高度な技術力には感心するばかり。
名画揃いなので、オリジナルと接した作品も多数ありました。
一方、意識してこなかった作品や知っているようでよく知らない作品もありましたし、改めてじっくりオリジナルを鑑賞したいと思える作品もありました。
どの作品がどの美術館で所蔵されているか。そうした部分も確認しながら、海外の美術館めぐりを想像していたら、俄然楽しくなってきました。
美術館の楽しみ方は、人それぞれ。
近代絵画が展示されている地下1階まではかなり混みあっていましたが、1階、2階の現代へと進むつれ、人影もまばらに。あまりの広さと膨大な展示数に、2階まで辿り着けない方もいるのかもしれません。
時間のない方のために、見どころをピックアップしたモデルコースが各階で紹介されています。また、当日に限り、再入館も可能です。
せっかく訪れるなら、途中に休憩を挟みながら、ゆっくりと時間をかけて鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
鳴門海峡にかかる大鳴門橋の景色も見事でした。
アートを巡るエッセイ
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