こんにちは、佐佐木 由美子です。
家族の介護が必要となるとき、仕事と介護を両立するための制度として、「介護休業制度」があります。
介護のために仕事を一定期間、休職されることを検討される方もいらっしゃるかと思います。
そうしたときに気になるのが、お金のことではないでしょうか。
育児・介護休業法によって、介護休業は規定されていますが、必ずしも有休であるとは限りません。
今回は、介護休業制度を利用して仕事を休み、給与が受けられない場合の支援として、雇用保険の「介護休業給付金」について解説します。
介護休業とは?
介護休業とは、ひと言でいうと、家族を介護するための休業制度です。
育児・介護休業法では、「負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を介護するための休業」を言います。
介護休業は、対象家族1人につき、93日を限度に3回まで分割して取得することができます。
常時介護というのは、歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与することを言います。
ここでいう家族(対象家族)とは、被保険者の
・配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
・父母(養父母を含む)
・子(養子を含む)
・配偶者の父母(養父母を含む)
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
のいずれかに該当する方です。
会社によっては、上記以外に対象家族の定義を広げている場合もあるかもしれません。
ただし、「介護休業給付金」の対象となる「対象家族」は、上述のいずれかに限られますのでご注意ください。
介護休業給付金を申請できる人は?
介護休業給付金は、雇用保険における制度のため、雇用保険に加入している被保険者であることが大前提です。
正社員に限らず、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイト、嘱託社員の方など雇用形態に関わりなく、まずは雇用保険に加入していることがポイントです。
そのうえで、受給資格として、介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月(※)以上必要となります。
(※)介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月としてカウントします。
なお、介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月ない場合であっても、この期間中に本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。
有期労働契約で働いている場合
介護休業開始時点において、有期雇用労働者(契約期間の定めのある方)の場合は注意したいことがあります。
介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないことが必要です。
労使協定がある場合
もう一つ気をつけておきたいことは、勤務先に介護休業に関する労使協定が締結されている場合。
以下に該当する場合、そもそも介護休業の適用を除外される場合があるので、労使協定もチェックしてください。
- 入社してから1年未満の方
- 申し出の日から93日以内に雇用が終了する方
- 1週間の所定労働日数が2日以下である方
介護休業給付金は、介護休業終了後の職場復帰を前提とした給付金です。
このため、介護休業の当初からすでに退職を予定されている場合は、支給対象となりません。
介護休業給付金はいつまで、どのくらいもらえる?
介護休業給付金は、上述の介護休業(2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するための休業)について、支給対象となる同じ家族について93日を限度に3回までに限り支給されます。
当然ながら、介護休業のために被保険者が実際に取得した介護休業であることが前提です。
介護休業給付の1支給単位期間ごとの給付額は、以下のとおりです。
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
休業開始時賃金日額は、原則として、介護休業開始前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除きます。)を180で除した額です。
1支給単位期間の支給日数は、原則として、30日(ただし、介護休業終了日を含む支給単位期間については、その介護休業終了日までの期間)となります。
また、給付額には上限があります。これは毎年8月1日に見直されることになりますが、2023年1月時点においては335,871円となっています。
1支給単位期間において、(休業開始時賃金日額×支給日数)の80%以上の賃金が支払われている場合は、介護休業給付金は支給されません。
また、80%に満たない場合でも、収入額に応じて、支給額が減額される場合があります。
介護休業期間中に就労した場合、1支給単位期間において、就労している日数が10日以下でなければ、その支給単位期間については支給対象となりません。
また、介護休業終了日の属する1か月未満の支給単位期間については、就労している日数が10日以下であるとともに、全日休業している日が1日以上あることが必要です。
この就労している日数は、在職中の事業所以外で就労した分も含まれます。
もらえる金額の目安
おおよその目安として、休業開始前6ヵ月間の平均月額に応じた支給額(1支給単位期間)の参考としてください。
月額15万円程度の場合: 支給額は月額10万円程度
月額20万円程度の場合: 支給額は月額13.4万円程度
月額30万円程度の場合: 支給額は月額20.1万円程度
申請方法は?
介護休業給付金の申請手続は、原則として、事業主を経由して行います。
通常は、勤務先が対応してくれるはずです。過去の給与等の登録を行う必要があるので、勤務先にお願いしましょう。
被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。なお、申請の窓口は、事業所を管轄するハローワークとなります。
雇用保険施行規則に記載されている申請できる期間は、休業を終了した日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までとなります。
申請期間内に手続きを行うことが原則ですが、やむを得ない事情などで手続きが遅れてしまう場合もあるかもしれません。
時効は、休業を終了した日の翌日から起算して2年を経過する日となりますので、期限内に手続きができない場合は、管轄のハローワークに相談されてみるとよいでしょう。
こんな場合はどうなる?
同じ対象家族を複数の被保険者が介護する場合
兄弟姉妹等で親の家族を行うケースは十分に考えられます。
同じ対象家族(たとえば父親)について、複数の被保険者が同時に介護休業を取得するような場合、それぞれにおいて介護休業給付金を受け取ることは可能です。
同じ対象家族の要介護状態が変わった場合
同じ対象家族について、すでに93日分の介護休業給付金を受給した場合で、さらにその家族の要介護状態が変わったために再び介護休業給付金が受けることはできるのでしょうか。
残念ながらそれはできません。要介護状態が変わった場合でも、支給対象となる同じ家族について93日を限度に3回までが上限となります。
介護休業期間が2週間未満の場合
介護休業は2週間以上にわたり常時介護を必要とする対象家族を介護するためのものですが、介護休業自体が2週間未満であっても対象となります。
たとえば、入所施設への手続きなどのために10日間休業した場合、10日分の申請をすることが可能です。
まとめ
介護休業を取得したい場合、介護休業開始予定日の2週間前までに介護休業開始日と終了日を決め、勤務先に書面等申出を行う必要があります。
介護について、なかなか勤務先に相談をしくい方もいるかもしれませんが、介護休業は法定の休業ですから、就業規則等に細かい定めがない場合でも、まずは勤務先にご相談ください。
休業する場合は、あわせて介護休業給付金の申請もご検討されてみてはいかがでしょうか。