こんにちは、佐佐木 由美子です。
以前から行ってみたいと思っていた美術館のひとつ、岡山県倉敷市にある大原美術館へ行ってきました。美術館周辺の倉敷美観地区と大原美術館についてお伝えします。
大原美術館と倉敷美観地区の魅力
倉敷駅から徒歩10分程歩くと、白壁の美しい町並みが広がる美観地区へ辿り着くことができます。
古き良き時代にタイプスリップしたような感覚の長閑な風景。倉敷川沿いに広がる町並みは、かつて物資の運搬で栄えた往時の風情を味わうことができます。
そして一際目を引くのが、古代ギリシャ・ローマ神殿を思わせる外観が特徴的な大原美術館です。
大原美術館は1930年に倉敷の実業家 大原孫三郎(1880-1943)が設立したもので、日本で最初の西洋美術中心の私立美術館です。
隣接して工芸・東洋館もあり、濱田庄司や棟方志功など民芸運動を主導した作家作品など幅広く展示されています。※館内の撮影はすべて不可
そのコレクションの数々には圧倒され、言葉もありません。本館にはクロード・モネ<睡蓮><積みわら>、ゴーギャン<かぐわしき大地>、ピカソ、コロー、ルノワール、ピサロ、ミレー、ルソー、セザンヌ、シャガール、モディリアーニ等々(書ききれないほど)、誰もが知っている名立たる画家らの上質な名画を一堂に鑑賞することができます。なんという贅沢な空間でしょう。
本館2階の一室には、エル・グレコの<受胎告知>が展示されています。マリアが聖書を読んでいると大天使ガブリエルが現れ、神の子を身ごもったことを告げるシーンを描き上げたもの。グレコの作品は日本に2点しかなく、かなり貴重なものです。個人的にも大変印象に残る作品でした。
こうした収集品は、大原孫三郎と固い絆で結ばれていた洋画家 児島虎次郎(1881-1829)の力によるところが大きく、児島の作品も数多く展示されています。美術館入って最初に見られる作品も児島の<和服を着たベルギーの少女>です。
児島虎次郎の作品については、正直なところよく知らなかったのですが、このように才能あふれる洋画家が日本にいたのかと感じ入りました。光と陰影、色彩のタッチが見事で、<朝顔>の三部作は必見です。
大原美術館の期待を裏切らない展示の数々は、建物等を含めて一見の価値があります。
有隣荘の特別公開~マティス光と色と
大原家の別邸として1928年に建設された有隣荘。通常は非公開とされていますが、3年ぶりに特別公開された「マティス 光と色と」の展示とあわせて鑑賞しました。大原美術館の正面入口にある今橋を渡ってすぐのところにあります。
東西両洋の建築様式と意匠、独特の色合いの屋根瓦を特徴とし、倉敷川沿いの白壁の町並みに鮮やかな彩を添えています。
玄関右手に洋間、ここには御影石の大きな暖炉があり、奥には光が燦燦と注がれるガラス張りの温室が配されています。マティス嬢の肖像はじめ3点の油絵が展示。
1階和室は本格的な書院造りで、美しい庭園を眺めることができます。
2階の和室には、<ジャズ>と題された色鮮やかな切り絵の作品が所狭しと並べられていました。この組み合わせが粋な感じ。開放的な景観も素敵で、前方には大原美術館を望むことができます。
語らい座 大原本邸(旧大原家住宅)
大原家が代々、現当主に至るまで暮らした住宅も見学しました。
建物は1795年に建築が始まり、以降は増改築を重ねて明治中期にほぼ今の形となったそうです。有隣荘から一本道を隔てて左手に。入口にはすぐ大きな土間が連なっていて、そこを抜けると中倉で大原家の歴史など展示を見ることができます。
建物奥には、8代總一郎氏の書斎をイメージしたブックカフェがあります。文学、哲学書やクラシック関係の書籍など貴重な蔵書が約2,000冊もあり、一部は手に取って読むことも可能です。
ここでお店の方と語らいながら、美味しいオリジナル珈琲を一杯いただきました。
大原美術館へ行くなら、重要文化財も鑑賞できる大原本邸もおすすめです。
旅情あふれる風景を徒歩で散策できる倉敷美観地区。大原美術館をはじめ、見どころがたくさんあり、とても楽しめました。
またふらりと立ち寄ってみたい。倉敷は、どこか懐かしさを感じさせる場所です。
アートを巡るエッセイ