こんにちは、佐佐木 由美子です。
先日、渋谷区立松濤美術館にて開催中の「津田清風 図案と、時代と、」展に行ってきました。
この展覧会では、大正時代に夏目漱石らの本の装幀を手がけた津田清風(1880-1978)を軸に、図案に関する様々な作品が紹介されています。
工芸品の下絵として捉えられがちな職人の仕事から、美術作品へと昇華された図案の世界は、興味深いものがありました。
そして展示の舞台となっている松濤美術館自体も、大変見応えのある建築物です。
これは哲学的な建築家と言われる白井晟一(1905-1983)が設計した建物で、晩年の代表的な作品です。1978年に工事が始まり1980年に竣工、美術館はその後1981年10月に開館されました。
今年で開館41年目となりますが、そう思えないほどモダンで文化的情緒が感じられます。
外壁のレンガは明るいピンク味のかかった花崗岩が使用されています。韓国ソウル近郊の石切り場から採れる石だそうですが、当時の日本ではほとんど知られておらず、これを白井は自ら「紅雲石」と名付けた言われています。
なぜ、哲学的な建築家と称されるのか(しかもそれを納得してしまう魅力があります)、背景をみると、京都高等工芸学校(現在の京都工芸繊維大学)を卒業後渡独し、ハイデルベルク大学やベルリン大学において近世ドイツ哲学を学ぶ傍らゴシック建築について学んだことがわかりました。
以下、撮影許可エリアで撮った写真を交えながら、美術館内部について感じたことをシェアします。
石造りの建物の中に広がる独自空間
石造りの外観には窓がなく、建物内は暗い雰囲気なのかと思いきや、想像を見事に裏切られました。
エントランスにはオニキスの石材をガラスに挟んだ光り天井が上品な輝きを放っています。そして、左手のフロアに進むと、今度は和テイストの円形の窓が目に飛び込んできました。
展示室(2階と地階)に行くのには、エレベータもありますが、階段がおすすめ。階段はらせん状になっていて優美な曲線がとても印象的です。照明はやや絞られていて、さりげなく彫刻作品が置かれていたりします。
2階へ上がると、この建物が円形で中央部分が吹き抜けになっていることが分かります。4階層分を貫くダイナミックな吹き抜け空間。しかも全面ガラス張りになっているので、温かな陽の光を感じることができます。
第2展示室(サロンミューゼ)は、エレガントな雰囲気。センスのある調度品、黒いレザーのソファがゆったりと配されていて、まるで邸宅の居間でくつろいでいるような感覚になります。
回廊から下を覗いてみると、水はそれほどありませんでしたが、噴水が見えました。
地階の第1展示室は、とても天井が高く開放的。この建物の形を反映してか楕円形の間取りとなっているのもユニークです。
展示室内は遮光された空間ですが、一歩回廊に出て上を見上げると青い空が見え、このコントラストも素敵でした。
展示作品と建築物、両方楽しむことができる松濤美術館。今度は建築ツアーに参加してみたいですね。