こんにちは、佐佐木由美子です。
ミドル以降になると、「いつまで、どのくらい働くか?」という将来の働き方(あるいは辞めどき)について、関心が高まってくるのではないでしょうか。
その際、気になることと言えば、やはり生活やお金のことです。
日経WOMANの調査によれば、老後のお金に不安を感じている人は、85.4%と大多数に上っています。一方、将来の年金額を把握できている人は、26.4%と少数派。
老後生活のベースとなるのは、私たちの年金です。自分がどのくらい年金額を受け取れるかまったく想像もつかないと、どのくらいのお金が必要となるのか、そのための働き方もなかなかイメージができません。
これでは、ますます不安になってしまいますよね?
漠然とした不安を取り除くためにも、将来の働き方を考えるうえでも、一度ご自身の年金見込額を把握してみることをお勧めします。
ねんきんネットでシミュレーション
公的年金に加入している人には、毎年誕生月になると「ねんきん定期便」が郵送されます。
「えっ!こんなに少ないの!?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、50歳未満の場合、記載されている見込額は、これまでの保険料納付額をもとに試算されたもの。未来のことは反映されていませんので、あくまでも参考として見ておく数字と言えます。
一方、50歳以上になると、現時点での納付状況が60歳まで継続すると仮定したうえで、受給額が試算されています。そのため、もう少し現実性を帯びてきます。
しかし、今や60歳で定年を迎えたとしても、それ以降も働くことが自然になりつつあります。
65歳まで、いや70歳まで働き続けるとしたら? 給与水準は現時点から下がるとしたら?……いったいどのくらいになるのだろうと知りたくなりますよね。
そんなときに活用したいのが、「ねんきんネット」です。
「ねんきん定期便」では、50歳未満の方においては、これまでの加入履歴に応じた年金見込額しか分かりませんでしたが、「ねんきんネット」を使えば、今後の働き方を自由に設定して、将来のシミュレーションができます。
試算する場合、現在と同じ条件で60歳まで加入し続ける設定で試算される「かんたん試算」と、「詳細な条件で試算」の2つの方法を選ぶことができます。
ちょっと面倒かもしれませんが、詳細な条件を入力してシミュレーションしてみると、もっとリアルに年金や働き方をイメージできると思います。
たとえば、今の仕事を60歳まで続ける(けれど給与は55歳以降60歳まで〇円)、さらに定年後は再雇用で65歳まで働いて給与は〇円、といった感じで、具体的に働く期間や給与額を入れて試算ができます。
働き方や収入条件、期間を変えて、様々なパターンを試算することで、年金額が変わってくるのがわかるはずです。それによって、何歳まで働こうか、どのくらいの給与水準が必要か、差額をどう埋めていくべきかなど、将来の計画を立てるのにとても役立ちます。
しかも、現時点までの納付実績は反映されているわけですから、何よりも正確な情報と言えるでしょう。
楽観的なシナリオから厳しく見積もったシナリオまで、複数のパターンを試算して、これからのことを一度じっくりと検討してはいかがでしょうか。
まだ一度も、ねんきんネットを利用したことがない(日本年金機構のサイトも見たことがない!)という方のために、最初の利用登録方法についてご紹介します。
ねんきんネットを利用するには?
日本年金機構の「ねんきんネット」で利用登録が必要になります。
登録には、以下2つの方法があります。
- マイナポータルからの登録する(ねんきんネットのユーザID取得不要)
- ねんきんネットのユーザID取得
マイナポータルから「ねんきんネット」を利用するためには、マイナンバーカードとメールアドレスが必要です。マイナポータルにログインして、「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」から「ねんきんネット」への連携手続きを行う必要があります。
一方、「ねんきんネット」のユーザIDの取得の際には、基礎年金番号、メールアドレスが必要となります。さらに「アクアスキー」を持っている人と、持っていない人で登録方法が異なります。
郵送されてきた「ねんきん定期便」があれば、「アクアスキー」が記載されています。
ただし、このアクセスキーを使えるのは定期便到着後3か月以内に限られています。有効期限を超えてしまっている場合や、「ねんきん定期便」が見当たらない人は、「アクセスキーなし」のボタンから登録することができます。
公的年金シミュレーターが登場
「ねんきんネット」よりもっと気軽に年金額を試算できるツールとして「公的年金シミュレーター」が登場しました。
2022年7月現在、試験運転中として公開されています。特徴は、何と言っても利用時にIDやパスワードが不要なこと。
「ねんきん定期便」の二次元コードを利用すれば、試算に必要な情報が自動的に入力されるため、よりスムーズに利用が可能。生年月日を入力して「試算する」をタップするだけで年金見込額がグラフでチェックできます。
初期画面では、ねんきん定期便の記録をもとに、現時点の年収が60歳時点まで続いたと仮定した試算結果が表示されます。
さらに、「今後の年収」「就労完了年齢」「受給開始年齢」を変更することで、いろいろなシミュレーションができます。
ただし、公的年金シミュレーターは、年金額を簡易に試算することを目的としているため、実際の年金額とは必ずしも一致しません。より正確な年金見込額の確認をしたい場合は、「ねんきんネット」が適しています。
「老後のお金」についてもっと知りたい人へおすすめの本
会社員か自営業・フリーランスかなど、私たちの働き方によっても、将来の年金額は大きく変わってきます。特に女性の場合は、新卒で入社した会社に定年まで勤め上げる人はまだまだ少なく、結婚・出産を機に仕事を辞めたり、パートタイマーとして働いたり、離婚したり……人によって働き方やライフスタイルは多様です。
だからこそ、一般ではなく「私はどうなの?」を知っておくことが大事になります。
「年金制度は複雑で面倒……」と言って目を背けていたら、不安は募るばかり。
公的年金が心細ければ、「iDeCo」や「つみたてNISA」を活用する方法もありますし、工夫次第で公的年金を増やす方法もあります。
老後のお金や年金制度の仕組みについて基本をわかりやすく知りたい方に、お勧めの本をご紹介します。
一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版 井戸美枝著
ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の井戸美枝先生の著書。ライフスタイル別に年金額予測や20代から年代別のTODOリストなどあって、具体的なアクションにつながるアドバイスがたくさん盛り込まれています。
この増補改訂版(2022年6月発売)では、最新の改正を網羅してさらにパワーアップ。読みやすくてお勧めです。
年金に関して言えば、2022年10月から従業員101人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金保険の適用が拡大されます。
年金を増やすという視点で考えれば、厚生年金保険の被保険者になる働き方を検討する、というのもポイントの一つと言えるでしょう。
働き方と社会保障は密接な関係があります。両輪で考えていけるようになると、心強いですね。