2015年 8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、女性活躍推進法)が成立し、同年9月4日に公布。この法律は10年の時限立法として施行されました。
この法律が成立したとき、「ようやく日本も……」と、期待に胸を膨らませた女性は多かったのではないでしょうか?
私もその一人です。企業に労務管理のアドバイスをする仕事柄、少しでも多くの方に知っていただこうと奔走しました。
しかし、企業の反応はいまひとつ。ダイバーシティに関心のある企業はもともと意識が高くマインドが醸成されていますが、中小企業の多くの男性経営者の反応は鈍いものでした。
女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法は、女性が職業生活において十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するために、国・地方公共団体・企業の責務等を定めたものです。
2016年4月1日から常時雇用する労働者が301人以上の民間企業においては、一般事業主行動計画の策定・届出、情報公表が義務付けられました。
2021年9月末時点における行動計画の届出企業率は、301人以上の企業で97.0%。ほぼ法律の義務は履行されていて、施行から5年以上経過したことを思えば、目に見えて状況が変わってきても良い頃です。
真剣に取り組みを進めた企業においては、成果が出ているかもしれません。しかし、全体としてみると、残念ながらその効果を実感できません。
現に女性の管理職割合の推移をみると、係長相当職でゆるやかに増加は見られるものの、女性活躍推進法の施行後において目覚ましい進展があるとは言えません。もちろん、単純に管理職割合だけで女性の活躍を測れるものではありませんが、マネジメント層に女性が少なければ、意見が反映されにくくなります。
図:役職別女性管理職割合の推移(企業規模10人以上)
あなたは自社の行動計画を知っていますか?
一般事業主行動計画とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえて策定するもので、計画期間、数値目標、取組内容、取り組みの実施時期を盛り込む必要があります。
常時労働者が301人以上の企業においては、すでに一般事業主行動計画が策定されています。
さらに2022年4月1日から、行動計画策定・届出、情報公表が101人以上の中小企業にも義務化されます。そのため、まさに今、行動計画を策定している中小企業は多いと思います。
あなたは、自社の行動計画をご存じでしょうか?
義務化されていない規模の企業も、行動計画を策定しているケースは全国で見られます。
21世紀職業財団の調査(2020年度)によると、自社の行動計画の内容を知っている従業員は、1万人以上の大企業であっても男性32.6%、女性40.9%であることが明らかとなりました。企業規模が小さくなるほど認知度は下がり、300人~499人規模の企業では男性16.4%、女性18.2%と8割以上の従業員が行動計画の内容を知らないのです。
行動計画は社内の周知義務があるので、知られていないということは、見えるようにはなっているものの、積極的な取り組みがなされていない、ということでしょう。これでは絵にかいた餅になってしまいます。
行動計画の必ず把握すべき基礎項目には以下の4つがあります。
・採用した労働者に占める女性労働者の割合*
・男女の平均継続勤務年数の差異*
・管理職に占める女性労働者の割合
・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
*印がついている項目は、雇用管理区分ごとに把握を行う必要がある
この基礎項目以外にも、企業ごとに項目を選択して把握した状況から自社の課題を分析して数値目標など定めます。
しかし、数値目標の設定に関しては、最低限目指すべき基準というものが明確に示されていません。そうなると、消極的な目標を立てて形骸化する恐れもあります。
逆に、本気で自社の女性活躍に関する状況の把握、課題分析を行い、行動計画を策定すれば、状況は確実に変わっていくと思います。
そうなれば、当然に社内周知も積極的に行うでしょうし、働く人たちの関心も高まります。数値目標に対する進捗状況も見える化することが大事で、一体感を持ってどこまで真剣に取り組んでいけるかです。
女性活躍推進法に関して、「やっぱり日本は変わらない」と諦めモードの方もいるかもしれません。でも、自分が働く職場環境を良くしたい。そういう想いは誰もが根底にあるのではないでしょうか。
女性の活躍に関する情報公表や他社の行動計画については、厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の女性活躍推進企業データベースにおいて検索して見ることができます。
データベースでは、このようなことを調べることができます。
情報公表をしている項目が多ければ、それだけ積極的に女性の活躍に取り組んでいるともいえます。
もし、こうした情報をまだ見たことがない場合は、一度チェックしてみてはいかがでしょう? 同業他社の状況を確認するのも刺激になります。
一人ひとりが関心を持つこと、そして声を上げることが、物事を変えていく力になります。