日本における2020年度の合計特殊出生率(一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均)は、1.34と深刻な状況であることはご存じの方も多いことでしょう。
さらにお隣の韓国では、同年に0.84まで低下し、日本以上に危機的な状況です。
この2つの国に共通しているのは、家事・育児に費やす時間の男女差。日本の女性が家事・育児に割く時間は、男性の4.76倍、韓国は4.43倍にも上ります。
一方、男女差が2倍以内の国では、おおむね出生率を1.5以上キープしているのです。
米ノースウエスタン大のマティアス・ドゥプケ教授らは、欧州19か国のデータを分析し、男女の分担が不平等なことが出生率の低下と密接に関係していることを明らかにしました。
「取るだけ育休」では意味がない
日本の男性育児取得率は、2020年度に初めて1割を超え、12.65%になりました。とはいえ、女性の81.6%と比べるとまだ相当乖離していることがわかります。
男性の育休取得率100%と声高に叫ぶ企業も昨今は増えましたが、取得日数はわずか数日程度だったりすることも珍しくありません。
実際、育休期間が5日未満の取得者の割合は約3割(28.33%)もいるのです(令和2年度「雇用均等基本調査」)。
男性の家庭進出の足掛かりとして、子育て期の初めに育児休業を取ることは極めて重要と言えます。
日本は、男性の育休取得を推進させるために、給付金の保証付きで休業できる期間も世界的にみて最も恵まれている部類に入ります。
にもかかわらず、それが政策の狙い通りに機能していると言い難い状況なのです。
2022年10月からは、男性が子どもの出生8週間以内に最大4週間の育休を取れるなど、柔軟性を高めた改正育児・介護休業法が施行予定で、期待されています。
ただ、男性の育休取得率を高める(ポーズばかり)ではなく、本当に男性が自分事として家事・育児にコミットし、家庭内労働の男女差を縮めていかなければ、こうした状況を変えることはできません。
男性が家事・育児を積極的に行っていくことができる柔軟な働き方が実現できるように、社会全体の意識も、企業の意識も、私たち個人の意識も大きく変わっていくことが極めて重要ではないでしょうか。