日本ではこれまで、同じ時間、同じ場所で社員同士が顔を合わせて、一緒に働くことがスタンダードな働き方とされてきました。
それが、「働き方改革」によって多様で柔軟な働き方を選択できる方向へシフト。さらに2020年以降、世界同時に起きた新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、テレワーク(在宅勤務)が注目されるようになりました。
テレワークの導入に関しては、これまでも様々な問題が指摘され、なかなか一般に普及しませんでした。しかし、目に見えないウイルスという強制力とICT(情報通信技術)の目覚ましい進化によって、一気にテレワーク/リモートワークが広がったと言えます。
これを一時的なものとして考える企業もあるようですが、私はそう思いません。柔軟な働き方の選択肢として、今後も一定の企業は継続するでしょうし、時々の出社と合わせたハイブリッド型へのシフトは十分にあり得るでしょう。
柔軟な働き方の制度設計で大事な要素
柔軟な働き方を実現するために、制度設計するうえで大事な4つの要素があります。
それは、①勤務日の柔軟性、②勤務時間の柔軟性、③勤務場所の柔軟性、④業務の遂行方法における裁量性、です。さらに言えば、兼業・副業が可能であるか、という要素もあります。
勤務日の柔軟性については、今年になってよく耳にするようになった「週休3日制、4日制」というものが、ひとつ考えられます。
勤務時間でいうと、代表的なところでは「みなし労働時間制」や「フレックスタイム制」があります。この「みなし労働時間制」には、以下の3つの種類があります。
・事業場外みなし労働時間制(11.4%)
・専門業務型裁量労働制(1.8%)
・企画業務型裁量労働制(0.8%)
厚生労働省による調査*では、上記( )にある通り、各制度を導入している企業割合は決して高いとは言えません。ただし、企業規模によっても差異があって、従業員数が多ければ多いほど、導入割合が高まります。ちなみに、1,000人以上の企業で専門業務型裁量労働制を採用している企業は10.6%となっています。
一方、フレックスタイム制を導入している企業割合は、6.1%となりますが、こちらも従業員数が多ければ多いほど、導入割合が高く、1,000人以上の企業では28.7%となっています。
ところで、裁量労働制とフレックスタイム制の違いをご存じでしょうか。これらを混同していると思われる発言を筆者は時々耳にします。
この違いについては、ダイヤモンド・オンラインに連載中「カタリーナに語りなさい!オンライン労務相談室」にまとめましたので、ぜひご覧ください。
フリーランスとの垣根が年々低くなってきている
働き方の柔軟性について、雇用契約で働く人たちの中で考えると、やはり企業がどういった制度を整備しているか、に依存するところは大きいと言えます。
アルバイトやパートタイマーとして働けば、融通が利きやすいのでわりきった働き方ができる反面、雇用の安定性が高いとは言えません。
本来の意味におけるフリーランスであれば、働く日や時間、場所、業務の遂行方法もすべて自分で自由に決められるので、最も柔軟性のある働き方と言えるかもしれません。
正社員というと、色々な意味で拘束力が強いので、もっと自由に働きたい人や、やりたいことがある人はフリーランスを選択していったとも言えるでしょう。
ただ、この垣根が近年低くなってきています。雇用されて働く立場にある人も、柔軟に働けるようになりつつあるからです。
「人」を大事にする職場
柔軟に働くために、上述した要素が大きいことは確かです。ただ、それ以上に大事だと感じるのは、「休みの取りやすさ」だと思います。
たとえば、通院や介護のサポート、子どもの学校行事、それ以外にもやるべきこと・やりたいことはいろいろとあります。仕事人であると同時に、私たちは様々な役割を担って生活をしています。
年次有給休暇が時間単位や半日単位で、中抜けも認められるようになると、ちょっとした用事があっても私生活とうまくバランスを取って仕事を進めることができるようになります。年休以外にも、企業によっては特別休暇を設けている場合もあるでしょう。
休みの取りやすさは、職場によって大きく異なります。
メンバー同士の信頼できる人間関係があって、お互いに個人を尊重していること。こうした職場であれば、急な休みがあってもお互いをサポートし合えますし、だからこそ安心して休みも取れるのではないでしょうか。
柔軟に働くための革新的な制度をいくら採り入れても、こういったところでギスギスしていたら、気持ち良く働けません。
柔軟な働き方を通して仕事、さらに人生を豊かなものにするには、「人」との信頼関係、そして多様性を認めることが大事なのではないでしょうか。