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働き方

多様な働き方の選択肢と自分のワークスタイル

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これまで画一的な働き方や長時間労働になりがちな雇用慣行の中で、その働き方に馴染めず、仕事を断念せざるを得なかった人たちは数多くいました。

フルタイムがダメなら、パートタイムがある、という意見もあるでしょう。ただそうなると、責任ある仕事をさせてもらえなかったり、待遇が大きく変わってしまうことが珍しくありません。

日本は新卒一括採用でキャリアが始まり、一斉行進の列からひと度外れてしまうと、挽回することが難しい傾向にありました。以前と比べて雇用の流動化は進みつつあるものの、会社へのロイヤリティが高く求められ、生活圏やライフスタイルにおいても会社中心で考えてしまうところがあるのではないでしょうか。

終身雇用、年功序列が当たり前の時代にあっては、その波に乗ることが労使双方において一定のメリットがあったかもしれません。しかし、今のようなVUCA化*された社会においては、そうした古いスタイルの前提条件はもはや通用しません。

むしろ、その時々の状況に合わせて柔軟に最適化することが求められています。

*VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から成る造語。不確実性が高く将来の予測が困難な状況を意味する。


働き方に柔軟性と多様性が拡大したら、労働市場に参加できる人がもっと増えるはずです。

これは、現に「働き方改革」を推し進める国にとっても、個人にとっても選択肢が増えることは好ましいことと言えるでしょう。

すでに一部の企業においては、柔軟性と多様性を拡大するべくいち早く取り組みを始めています。

一方、こうした動きに積極的になれない企業も少なくありません。管理コストから考えれば、柔軟で多様性があるほど負担が大きくなるのは事実。企業にとっては、効率的に進められる標準化されたモデルを好む傾向にあります。

このように従来のやり方を維持しようとする企業に対して、「もっと柔軟に、自由度を高めて働きたい」と考える一定の個人もいます。その希望が叶わないとなれば、組織を離れるケースも出てくるでしょう。

人材争奪戦が激化すれば、有能で経験豊富な人たちは、自分の希望やニーズが受け入れられるところへ移るか、あるいは自分でビジネスを立ち上げるかもしれません。

企業もこうした変化を感じているものの、大企業においては働き方をドラスティックに見直すことは、そう簡単ではないでしょう。そこまでする必要性をまだ感じていないかもしれません。

一方、機動力のある小規模な組織では、従業員のニーズを聞き入れ、個別に柔軟な対応をするケースもあります。人材というリソースが限られているからこそ、一人ひとりの個性と多様性を大事にしようと考えるのではないでしょうか。

実際、社労士して中小企業の雇用現場に関わっていると、もちろん企業にもよりますが、柔軟性や意思決定力の高さを感じます。そうした個別対応がなければ、仕事を続けることはできなかった人もいるでしょうし、チャンスを与えられたことで活躍の場を見出した人もいます。


組織を飛び出して個人で仕事を生み出せる人もいますが、事業主となって働くことと、従業員として働くことは、また別のスキルセットが求められます。

どういう働き方が最も望ましいかは、当然ながら人によって違います。どちらが正しいということはありません。どちらが自分にとってよいか、なのです。

私は、一人ひとりが自分の望む働き方や仕事を通じて、自立して生きる人が増えたらもっと素晴らしい社会になると考えています。

個人が自分を軸として多様な働き方を選べるようになったら、長期化する職業人生をもっと自分らしく幸せに過ごせるのではないでしょうか。

だからこそ、柔軟で多様な働き方の選択肢がもっと増え、個人の意思で選べるようになることに価値があると考えます。

たくさんのオプションを持つには、能力やスキルなども大事になりますし、磨きをかけていくことも欠かせません。自分が理想とするワークスタイルを手にするには、それに向けた準備も必要になります。

選択肢を多数持てることは、人生における自由度が高まります。一方、別の見方をすれば、どれを選ぶのがよいか、自分の頭で考えなければなりません。責任を引き受ける覚悟も要るでしょう。

それを面倒だと思うか、面白いと考えるか。あなたはどちらでしょうか?

 

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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